<第155回九州地区高校野球大会鹿児島県予選:吹上7-0奄美(7回コールド)>27日◇1回戦◇鴨池市民球場

 吹上は3回裏、相手のエラーで先制点を挙げる。

 毎回先頭打者を出しながら、5回まで1点にとどまっていた吹上だったが6回裏、先頭の5番・小田 舜也(2年)が右越え三塁打で出塁。7番・鮫島 来飛(2年)の左越え二塁打で2点目を挙げ、この回、4本の長打を集中して計4点を追加して点差を広げた。

 7回は相手のエラーも絡んで、2点を加え、7点目を挙げてコールド勝ちした。

 奄美はエース福永 好生(1年)が8奪三振と好投し、打線は1、3、6回と3度得点圏に走者を進めたが、本塁が遠かった。

 奄美としては22年夏以来、2年ぶりとなる県大会単独出場だった。コールド負けだったが、酒匂 千速監督は「成長の跡を見せてくれた」と選手たちをたたえていた。

 4月に9人、夏の大会後に1人、計10人の1年生が入部。夏はそれまで合同を組んでいた古仁屋の3年生のために合同チームで出場したが、この秋からは単独出場が叶った。

 「こんなに早く単独で出られるとは!」と酒匂監督。共に4月から赴任してきた後藤 光部長と取り組んだ勧誘活動を振り返る。「初心者にも敷居が低く、楽しい野球部にしよう」(後藤部長)と新入生のための部活動紹介では、機械電気科教諭の技を駆使してオリジナル動画を作成。校内のいたるところに部員勧誘のポスターも張った。今大会を盛り上げるために、吹上戦の日時と部員たちの写真を合成した告知ポスターも作った。公式インスタグラムも開設した。「野球部が活動していることを、まずは校内の人たちに知ってもらいたかった」(酒匂監督)。

 部員12人のうち経験者は5人。半分以上が高校から野球を始めた。右翼手の伊東 志音(1年)は昨年6月にペイペイドームであったプロの試合を見てから野球の楽しさに目覚め、小宿中同級生の光 柊空や林 彪馬と遊びでキャッチボールをするようになった。「悩んで迷った」が高校では野球部に入ろうと決めていた。

 3回の初打席で二塁打を放つ。「嬉しくてどう打ったか覚えてない」ほど興奮した。3回には外野飛球をちゃんと捕球できた。5回は飛球をおでこに当てて途中交代。「最後まで出られず、チームが負けて悔しい」と感じ「春にはもっと確実にプレーできて、みんなに信頼される選手になりたい」と思った。

 最初は土日の練習に出てこない部員もいたが、夏以降も部を辞めることなく、毎回の練習に全員がそろうようになった。「大会を経験し『自分たちがやらないといけない』気持ちが出てくるようになった」(酒匂監督)。

 エラーや打てないのは当たり前。今できることを精一杯取り組んだら、5回まで1点差で食らいつく接戦ができた。「できた」手応えを感じただけに、好機に打てなかったことなど「できなかった」ことへの悔しさも湧く。「春はもっと力をつけて1勝を目指す」と玉利 彪雅主将(2年)は誓っていた。