<秋季京都府大会 準々決勝:山城 6-4 鳥羽>◇2024年9月28日◇わかさスタジアム京都
山城は全国に15校しかない第1回大会から夏の大会に欠かさず出場している「皆勤校」。春1回、夏3回の甲子園出場実績があり、卒業生には牛若丸と称され、監督として85年の日本一に貢献した元阪神の吉田 義男がいる。
そんな伝統校も1961年夏を最後に甲子園から遠ざかっており、今夏は京都大会で初戦敗退。それでも旧チームから主力が約半数残っており、新チームへの期待値は高かった。
2017年春以来となる8強入りを果たすと、準々決勝でも夏4強の鳥羽相手に互角の戦いを披露。しかし、同点に追いついた直後の4回裏、主将で正捕手の髙尾 輝(2年)が顔面に死球を食らって退場を余儀なくされる。
チームにとっては緊急事態だったが、「焦っていたのは僕くらい」(岸本 馨一郎監督)と選手に動揺はなかった。この直後、無死満塁から7番・池垣 雄大(2年)の右越え2点適時二塁打で勝ち越すと、二死三塁から9番・山元 柊磨(2年)の中前適時打でリードを3点に広げた。
5回からは投手が本職ながらも捕手経験のある林 統威(2年)がマスクを被ることに。「対応できるように準備してきたので、焦りはなかったです」と林自身に動揺はなかったが、エースの井上 瑞貴(2年)は「自分で配球を考えるしかない」といつもより首を振る回数が増え、神経を使いながらの登板だった。
井上瑞は回転数の多いストレートが持ち味の右腕。この日は変化球の制球が定まらなかったが、高めのストレートでフライアウトを稼いだ。
山城は5回裏に一死一、二塁から5番・石浦 諒大(2年)が右中間に2点適時三塁打を放ち、2点を追加。6回表に2点、8回表に1点を返されたが、井上瑞が最後までリードを守り切った。
「ベスト4、近畿大会を目指してきたので最高でした」と急造捕手を務めあげた林は涙。主将の負傷離脱を全員野球で乗り切った。
髙尾は試合中に病院へと向かい、岸本監督によると意識ははっきりしているとのこと。準決勝に出場できるかは未定だが、次につなげることができたのは大きい。
準決勝の龍谷大平安戦で勝利すれば、近畿大会への出場権を得ることができる。「一戦必勝なので、先を見ずに戦っていきたいと思います」と意気込む岸本監督。伝統校の快進撃はまだまだ終わらない。