<秋季埼玉県大会:西武台 4ー3 春日部共栄>◇2024年9月28日◇準決勝◇県営大宮球場

「点が取れないのは想定していた。大野君はインコースを消してもクロスファイヤーが来ますし、右打者は基本外はシュートする。右は手も足も出ないと思ったので、クロスファイヤーを行けと伝えていたがそれでも抉られるので、手が出なくて。高めに浮いた球だけを行けと。左打者は変化球を捨ててもいいから、外の直球だけを行けと」(河野創太監督)と、今大会24イニング無失点で準決勝を迎えた大会No.1投手の春日部共栄の左腕・大野 泰輝(2年)に挑んだ西武台打線。だが内藤 竜暉(1年)と今沢 翔太(2年)以外はなかなかヒットが打てず、結局毎回の15奪三振を喫する。ただ、「うちは点が取られないことが攻撃だと思っていた。向こうがゼロっていうのがダメージになるので、それを続けていって後半勝負だよ」(河野監督)と、慌てなかった。

 対する西武台の先発は今大会急成長を遂げた背番号10の左腕・加藤 爽翔(2年)。この日も持ち味であるテンポを武器に試合前半は春日部共栄を封じ込めるも、5回裏、春日部共栄打線に捉まり、4長短打に送球エラーが重なり一挙3点を失う。

 だが、西武台は6回表、無死三塁から内藤のタイムリーですぐに1点を返すと、やや疲れの見える春日部共栄・大野に対し、2点を追う最終回に打線が猛反撃。

「9回は2点差でも行けるっていう良い伝統があったので。代打の追木には『追い込まれるまでセーフティーバントだよ』って言ってあり、良く決めてくれた。金谷は打率は低いが人間的に良く、外野まで運んでくれたらと思っていたんですが、『喰らいついて行けよ』でうまくあそこに落ちるんですから」と、興奮気味に振り返る河野監督。4番・田代 寛人(1年)の死球と5番・山本 龍斗(2年)のヒットで無死一、二塁とすると、本来エースの代打・追木 渉登(2年)が絶妙なセーフティーバントを決め無死満塁と絶好の逆転機を迎える。一死後、代打・金谷 和輝(2年)が殊勲の同点打を放つと、続く横内 快成(1年)のバントで三走・追木が生還。4対3とついに逆転に成功する。ちなみに4点目のバントだがスクイズのサインではない。

「スクイズをやって外されるのも嫌で、セーフティースクイズは逃げのサインなので嫌だなと。あそこはセーフティーバントです。走者が追木だったのでセーフティーバントで還って来れるという自信があった」(河野監督)とのこと。その裏をエース吉良 敏信(2年)がきっちりと抑えた西武台が9回見事な逆転劇。春日部共栄を4対3で勝利し5年ぶりの関東を決めた。

「夏3年生が残してくれた戦いが大きかったのかなと。凄く自信になりました。本当は母校の桐蔭学園とやりたかったですが、負けてしまって。ただこういう形で神奈川に行けるのはとても嬉しい。浦和実業は良いチームなんで、今日見ても強いなと。ただ決勝は今日以上に三振しないと思うので粘っこく行きます」(河野監督)と、決勝戦も持ち味の粘りで浦和実に挑むはずだ。