不思議な「抜ける」感覚を体験するボール

あらゆる野球道具が販売しているようになり、近年では、トレーニング器具も様々な種類が店頭に並ぶようになった。形状はボールでも、通常よりも重たくなっているサンドボール。2色に塗装することで回転をチェックできる練習球。他にも、見た目も感覚もボールと変わりないが、計測器を内蔵することで球速と回転数を同時に測れる最先端のアイテムも販売している世の中だ。

様々な球児に向けて、見た目はボールのままで、あらゆる目的に応じたトレーニングアイテムを販売している。そんななかで、ミズノが販売しているMOI-75(エムオーアイナナジュウゴ)は、見た目は完全な硬式球。言われなければトレーニング器具とは気づかないが、投げてみると、「少し軽くて、抜けやすいかも」と感じるアイテム。ここで初めて通常のボールとは違うことに気が付くが、話によると重量も変わりないという。

となると、大事なのは「抜けやすい」という感覚にあるようだ。

メジャーリーガー、開幕投手も太鼓判のトレーニングアイテム

この摩訶不思議なボール、巨人・菅野智之投手(東海大相模出身)が使ったことが報じられ、注目度が高まっている。

ますます謎が深まる1球だが、実はWBCの決勝・アメリカ戦で登板したカブス・今永昇太投手(北筑出身)、日本ハム・伊藤大海投手(駒大苫小牧出身)も愛用している秘蔵アイテムなのだ。

球界を代表するピッチャーたちが、どうして「抜けやすい」感覚がある、MOI-75を使うのだろうか。

「普段のキャッチボールでも使いますけど、これ(MOI-75)は指先から離れやすいのが特徴なんです。だから遠心力に負けないように、指先でしっかり抑えつけるように使える効果が期待できるんです。
普段から硬式球だけ使うのは当たり前なんですが、慣れてくるからこそ、新しい感覚が欲しくなるんです。そんなときにこれを使ったり、硬式球に戻ったりすると、新しい感覚に気付けるので、自分は良いと思うんです」(今永)

「NPBに入ってから、球速だけではなくて、キレといったところで勝負しようと思ったんです。改めて球の回転を大事だと思っている時に、これ(MOI-75)に出会ったことで感覚が変わりました」(伊藤)

新たな感覚を得るため。回転を強化するため。思惑はそれぞれだが、確実なのは回転や指先の強化に、MOI-75を使っているということ。そして球界を代表する超一流が重宝するアイテムだということだ。

上手くなって野球が楽しくなるような魅力ある1球

今永、伊藤が大事にするほど、効果のあるトレーニング器具であるMOI-75。ただ、どうして見た目も重さも硬式球と変わらないのに、「抜ける」と錯覚させることができるのか。その謎の答えは構造にある。

開発に携わった中田真之氏(ミズノ用具開発・企画)によると、慣性モーメント(MOI)(=Moment of Inertia)を、通常に比べて75%になるように設計。硬式球とは違い、中心に鉄球を使用。さらに鉄球の周りには、人気複合バット・ビヨンドマックスで使っているポリウレタンを採用することで実現させたという。

SDGs(持続可能な開発目標)にも即したような画期的なアイテムは、こうした工夫を凝らしたことで、6年の月日をかけて2023年、販売に至った。もちろん回転向上が目的であることは前提だが、もっと大きな意味を持たせていると中田氏は話す。

「野球界全体が次の100年に向けて動き出してきた中で、『新しいことをやらなきゃいけない』って思うんです。やはり、少子化が進んでいる中でも野球人口を少しでも維持させたい。そのためにはプレーヤーのケガ防止や技術の向上をサポートし、一人でも多くの人が野球を継続することに貢献できればと思っています。BLASTやMA-Q、そしてMOI-75を発売した背景にもその思いもあります」

投手はもちろんだが、回転数が増えることで変化が大きくなるため、「野手もシュートしやすくなることで、回転に関心を持つと思います」と送球に課題を持つ野手もターゲットになるという。この使い方には、広島・会沢翼捕手(水戸短大附出身)も「キャッチャーも使えますよね」と期待の声を上げていた。

特殊なトレーニング器具ではないため、普段の練習のみならず、試合前のアップやブルペンなど、場所を問わずに使えるはずだ。手ごろに使える、というのもトレーニング器具にとっては大事な要素だ。

他のトレーニング器具と比べて、1つ頭「抜ける」魅力を持つMOI-75、見つけた際は一度体験してほしい。

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