<関西学生野球連盟 令和6年度秋季リーグ戦:関西学院大 7-4 同志社大>30日◇第4節2回戦◇ほっともっとフィールド神戸

 関西学生リーグで春秋連覇を目指す関西学院大がここまで6勝1敗1分けの勝ち点3で首位を快走している。春のリーグ戦で活躍した飯田 泰成(2年=春日)と林 晃大(1年=佼成学園)が怪我で離脱している中でエース級の働きを見せているのが百合 泰祐(4年=桐朋)だ。

 ここまで7試合中5試合に先発して、2勝0敗、防御率2.28の好成績。第3節の近畿大戦では1回戦で8回3分の2を投げて2安打1失点、3回戦で6回無安打無失点と立て続けに快投を披露した。

 最速は143キロと決して際立つわけではないが、「なるべく相手に考えさせる間を与えないように」とテンポ良くストライクを投げ込み、気づけば相手の攻撃が終わっている。そんな印象を持たせる投手だ。

 中3日での先発となったこの日は「疲労もあったんですけど、調整が甘かった」と4回2失点。本調子ではなかったが、失点した回を最少失点で凌ぎ、相手に流れを渡さなかった。

 出身は大阪府枚方市。小学2年生の時に家族の仕事の都合で東京に引っ越した。高校は私立の進学校である桐朋に進学。MLB挑戦を表明している二刀流の逸材・森井 翔太郎(3年)が在学していることでも知られている。

 陸上競技ではパリ五輪男子400mハードル日本代表の豊田兼や男子八種競技の高校記録保持者である高橋諒(いずれも慶応義塾大)を輩出。進学校でありながらスポーツでも優秀な人材が育っている。桐朋の印象について、百合はこう語ってくれた。

「凄く自由です。制服もないですし、校則もほとんどないです。進学校って勉強、勉強のイメージがありますけど、『自分の好きなことを突き詰めなさい』というところがあるので、もちろん、みんな勉強もしていますけど、部活も一生懸命取り組んでいて、進路に関しては自由にやらせてくれる学校なので、生徒第一に考えてくれる学校だと思います」

 高校3年の夏は西東京大会3回戦で日大三に敗戦。大学では野球を続けることを考えておらず、早稲田大を一般受験したが、不合格で浪人生活を送ることになった。

 だが、浪人中に野球への想いが再燃して、大学で野球を続けることを決意。「親元を離れて自立した生活をすることは将来、社会人になるために大事だと思った」と生まれ育った関西で一人暮らしをすることを決め、一般入学でも入部できる関西学院大に進んだ。

 浪人中は「トレーニングと言えないトレーニング」という程度の練習しかできておらず、入部直後はポール間走3本すら苦しかったという。それでも「研究熱心」と本荘雅章監督が認める性格が幸いして着実に力を付ける。3年春にはついにリーグ戦デビューを果たした。

 しかし、今春のリーグ戦は1試合しか登板できず、6月の全日本大学野球選手権ではあと一歩のところでベンチ入りを逃した。「悔しかったですけど、秋までやることは決めていたので、自分の中で火を付けられる瞬間になったと思います」とラストシーズンに全てを懸けることにした。

 それからはウォーターバッグを使ったトレーニングで体感を鍛えたことで制球力が向上。オープン戦でも結果を残して開幕投手の座を掴んだ。

 すでに一般企業への内定が決まっており、本格的な野球は今季で引退する予定。「肩、肘が飛んでも何の問題でもないです」と笑い飛ばす。ここからリーグ戦は佳境に入っていくが、彼の野球人生はラストシーズンにピークが来ているのは間違いなさそうだ。