プロ野球で戦力外通告が始まった。その顔ぶれを見ると、成績不振の選手がほとんどであるが、ある球団だけ「なぜこの選手が?」という顔ぶれがリリースされている。それが阪神である。戦力外となった顔ぶれはこちら。
加治屋 蓮投手(33歳・福島-JR九州-ソフトバンク)
岩田 将貴投手(26歳・九産大九州-九産大)
片山 雄哉捕手(30歳・刈谷工-至学館短大-福井ミラクルエレファンツ)
遠藤 成内野手(22歳・東海大相模)
髙濱 祐仁外野手(28歳・横浜-日本ハム)
二軍でも実績が高い選手が多く、SNSでも「まだ早い」「もったいない」という声で溢れている。昨年の阪神の戦力外では中日に移籍した板山 祐太郎外野手(成立学園)が64試合で3本塁打、13打点、打率.237とキャリアハイの成績を残し、堅守の山本 泰寛内野手(慶応義塾)も78試合に出場して、打率.250とユーティリティプレイヤーとして重宝されている。今回も宝の山となりそうな阪神の戦力外となった選手を見ていきたい。
まず加治屋は昨年51試合登板して、防御率2.56、1勝5敗、16ホールド、1セーブと好成績を残し、リーグ優勝と日本一に貢献した。今季は13試合で防御率4.50に終わった。ただ、二軍では29試合で防御率0.68、2勝1敗、2セーブ、28.1回を投げ、28奪三振と二軍ではほぼ敵なしの投球だった。投球を見ると、どの試合でも140キロ後半の速球、140キロ前半のフォーク、130キロ中盤のカットボール、120キロ中盤のカーブをしっかりと投げ分けており、能力は非常に高い。二軍では若手投手が炎上すれば、加治屋が投げて火消しをしており、頼もしい存在だった。
岩田は左サイドの技巧派として今年から支配下登録。二軍46試合で、防御率2.11、1勝2敗。被安打率は.206、奪三振率は6.81。38.1回を投げて与四球はわずか5。成績だけ見ると、ネックになる部分はそれほど見当たらない。
それでも今のチームの中で立ち位置が上がることなく、シーズンが終わってしまった。
物足りなさを感じるのは、球速が不足していることだ。常時135キロ前後の速球、120キロ台前半のスライダー、130キロ台前半のツーシームを駆使して抑える。技巧派でもNPBレベルはやはり常時140キロ以上はほしい。左の技巧派サイドとして称される高梨 雄平投手(川越東)も140キロ台中盤の速球を投げている。
阪神は右、左問わず140キロ台後半のパワーピッチャーが多いため、首脳陣としてはそういう投手を使いたくなる気持ちは理解できる。
それでも投手が足りない球団の調査は入るかもしれない。
片山は二軍での打撃成績は申し分ない。90試合で、210打数65安打、2本塁打21打点、打率.310、OPS.756、得点圏打率.327だった。捕手では21試合、一塁は50試合とメインが一塁だった。30歳とベテランに入る年齢ではあるが、捕手が薄い球団はチャンスはあるだろう。今年はドラフト的に見ても捕手が弱い年であり、他球団への移籍があることを期待したい。
遠藤はウエスタンで出塁率.392を記録し、さらにウエスタン2位の30盗塁もマーク。二塁手としては82試合に出場して、守備率.975。二塁手で規定守備機会に到達したソフトバンク・廣瀨 隆太内野手(慶応義塾-慶応大)は84試合で守備率.969、広島・佐藤 恵介内野手(中京大中京-静岡大)は86試合で守備率.963と2人より良い。ただネックになるのは、二軍で本塁打がなかったこと。盗塁失敗15と成功率は低い。バランスは取れているが、粗削りなのだ。
阪神は1学年下に髙寺 望夢内野手(上田西)、来季高卒3年目の戸井 零士内野手(天理)、新人の百崎 蒼生内野手(東海大星翔)、山田 脩也内野手(仙台育英)と楽しみな若手内野手が多い。球団の判断としては来季は百崎、山田、戸井あたりを優先的に起用したい考えなのだろう。とはいえ23歳で複数ポジションを守れて、盗塁意欲のあるバランス型の二塁手は魅力的な選手だ。今季は0本塁打に終わったが、元々投手として145キロを投げる強肩で、体つき、スイングを見ると、フィジカルの強さもある。コツをつかめば本塁打量産できる選手へ化ける可能性は持っている。
高濱は日本ハム在籍時の2021年には8本塁打を放ったが、阪神2年間で一軍出場なし。今季は二軍で70試合で打率.273、0本塁打、13打点と自慢の長打力を発揮できなかった。来年で29歳と年齢的にも厳しい。
人気になりそうなのが加治屋、遠藤。年齢を気にしなければ、ユーティリティと打力の高さを買って片山、岩田は左のワンポイントとして需要があれば可能性はあるだろう。
現在は各球団はドラフトのために枠を空けている時期だ。ドラフトでは補えなかった補強ポイントに彼らに合致し、再びチャンスが訪れることを祈りたい。