今年の夏、ドラフト候補として評価を高めたのが坂井 遼投手(関東第一)だろう。夏の甲子園では18.2回を投げて防御率0.00の快投を見せて、準優勝に貢献した。最速151キロの速球、スライダー、フォークなど多彩な変化球を投げて打者を圧倒する投球スタイルはセンバツまでとは別人の投球だった。U-18代表にも選出され、評価を上げた坂井の投球、将来性について考えていきたい。
まず自慢のストレートだ。甲子園での平均球速は、ロングリリーフした北陸戦では138.15キロ、最速151キロを計測した東海大相模戦では147キロだった。1イニングだけならば、140キロ台後半を連発する馬力の大きさがあり、長いイニングではペース配分を意識して、強弱を抑えながら投げている。そのストレートは打者の手元でぐっと伸びて空振りを奪うことができる。この球質の良さは昨秋の時点でスカウトから高評価されていたと聞く。
センバツまではがむしゃらに押すだけだった。意識がだいぶ変わったのか、両サイドへ丁寧に投げ分けながら、試合展開に応じて、ストレートのスピードに強弱をつける。その結果、低めに決まり、被打率も少なくなり、状況によって高めのストレートで三振を奪い、メリハリがついてきた。コントロールが安定したのは投球フォームの影響も大きいだろう。セットポジションから始動することで、軸のブレが少なく、左足を勢いよく上げていきながらもバランス良く立つことができている。テークバックからリリースに入るまでの動きに力みがなく、スムーズに腕が振れている。そのためコントロールが安定しやすい。
変化球の精度、コントロールも高まった。120キロ台前半のスライダー、120キロ台後半のチェンジアップ、110キロ台のカーブで構成する。いずれも低めでストライクが取れるので、高確率で三振、内野ゴロに打ち取ることができる。初球からチェンジアップで入って、フルスイングをさせない工夫もできている。
投球技術の進化で、心理的にも余裕が出たのか、投球のコツを覚えた。プロの世界では再び環境の変化に苦労するかもしれないが、春から夏へかけて成長した姿勢を思い出してレベルアップしてほしい。
高卒プロ志望を決めたが、中位以上の指名はある投手だと評価できる。プロで活躍するには、120キロ台中盤の変化球を130キロ台にし、どの試合でも軽々と140キロ台後半〜150キロ台前半の速球で押せるまでパワーアップをしていきたいところだ。
最後の夏は勝てる投球をするために、強弱をつけていたが、プロの舞台では目一杯、力のあるストレートを投げて打者と向き合うところからスタートするのではないか。最初は苦労しても、投球術を覚えた2年目あたりから頭角を現し、高卒3年目〜4年目から一軍でブレイクが期待できるだろう。将来的には、ヤクルトの中継ぎとして活躍する速球派リリーバー・大西 広樹投手(大商大高)のような投手へ育ちそうだ。
<坂井遼(さかいはる)>
右投げ右打ち
178センチ78キロ
千葉県富里市出身
富里リトルスターズでは投手と外野
千葉県八街市にグラウンドがある江戸川南ボーイズでプレー。主に外野手
関東第一では再び投手に転向
1年秋から背番号18でベンチ入り
2年秋にはエースとして都大会優勝
3年選抜ではリリーフとして登板も初戦敗退
3年夏では再びエースとして返り咲いて、5年ぶりの優勝に貢献
甲子園では準優勝
高校日本代表に選出
趣味:けん玉