◇第155回九州地区高校野球大会鹿児島県予選・3回戦◇隼人工5-1鹿児島情報◇平和リース球場◇4日

隼人工は初回、二死一三塁から5番・山下 珀人(2年)が三塁線を鋭く抜ける適時打で先制した。

 鹿児島情報は3回裏、一死一三塁で5番・上迫 夏音(1年)がスクイズを決めて同点に追いつく。

 6回表、隼人工は二死二塁から7番・中村 威風(2年)が左越え二塁打を放って勝ち越しに成功。7回には先頭の9番・藏園 遥人(1年)が中前打で出塁し、3連続バント攻撃を仕掛ける。無死一二塁からの送りバントが悪送球を誘って2者生還。4番・唐仁原 光希(2年)の犠飛で計3点を追加して大きな流れを引き寄せた。

 先発のエース浅井 聖(2年)は3回まで5安打を打ち込まれたが、4回以降立ち直り、4回以降は無失点で切り抜け、完投勝利を挙げた。

 隼人工にとって8強入りは、07年秋、08年春の2季連続で達成して以来、16年半ぶりの快挙だった。今大会の姶良伊佐地区のチームとしては前日の国分中央に続いて2校目、県立校としては唯一の8強入りである。新開 剛監督は「2年前の秋は野球部員が6人しかいなかった。それを考えればここまで本当によく頑張ってくれた」と選手たちの健闘をたたえていた。

 日頃は積極的に打ったり、足を使って強攻することが多いが「送って二塁に進めれば何か起きるような気がした」新開監督の閃くものがあり、初回、6回はバントで得点圏に送って適時打が出た。7回は3連続バント攻撃が相手のミスを誘い、勝利を決定づける3点を追加した。

 大黒柱のエース浅井の力投はこの日も勝利の原動力となった。序盤3回は打ち込まれてスクイズで失点したが、4回以降は「しっかりと直球で内角を突ける」ようになってから、自分のリズムで投球ができるようになった。4回の先頭打者にセンター返しのライナーを打たれたが、遊撃手・中村 剛瑠(2年)が好捕。野手陣も再三の好守で盛り上げた。

 直球の最速は120キロ台だが、スライダー、チェンジアップとのコンビネーションで丁寧にコースを突き、狙ったところに投げ分けることができれば、ジャストミートの打球も野手の正面になる。「1人で野球をやらない。みんなで野球をやっている」と自分に言い聞かせるために、打ち取ったら必ず野手を見て笑顔を見せて拍手することを心掛けている。攻守ともに狙い通りの野球で、強豪・鹿児島情報に競り勝った。

 2年前の秋は部員が6人しかいなくて、他部から助人を借りて大会に出場していた。慢性的な部員不足で悩むチームだったが、昨年春、現2年生が選手16人、マネジャー1人の計17人が入部。部員集めの「特効薬」はない。ただ「今までにないぐらい熱心に中学校を回った」成果だと新開監督は言う。

 浅井も新開監督の「熱さ」に心動かされて、隼人工への進学を決めた1人。帖佐中の3番手投手だったが「投手で使う」と言ってくれた新開監督の言葉に心くすぐられるものがあった。今年の1年生は選手18人、マネジャー1人の19人が入部し、ベンチに入れない部員も出るほどの「大所帯」となった。

 人が増えただけではない。熱心な野球への取り組みが実を結び、16年ぶりとなる8強入りを果たした。

 「鹿児島実や神村学園と試合をするのが夢だった。目標の九州大会出場のためにも、次の鹿児島実戦が楽しみ」と浅井。県内では唯一、赤のストライプのユニホームの隼人工が今大会を盛り上げる主役の座を虎視眈々と狙っている。