昨年、福岡に「Liga Agresiva」の新リーグが発足したことを紹介した。MLB推奨の球数制限を導入し、低反発バットを使用。監督がベンチに入らず選手たちで試合に臨む。独自ルールを採用してリーグ戦を行うことで、互いのレベルを上げていこうという試みだ。全国では広がりを見せていて、福岡では昨年、第1回が開催された。

 発足に際して中心的な役割を果たしたのは、福岡の城南高校、中野 雄斗監督。コロナ禍の影響で予定通りに試合を消化できなかったが、すでに今年の第2回目に向けた構想を固めつつある。

 実際にやってみて問題点があった。「監督がベンチにいないことが選手の自主性を促すいい面もありますが、その時の自分の判断が良かったのか、悪かったのか。その時に分からないまま、選手がプレーを続けている。試合後に説明しても限界がある」。

 プレー中は口を挟まなかった第1回と違い、今年についてはプレーを中断してでも「直接、即指導」する方法を検討している。「例えば、これまでは初球を見逃した打者に、その場で『打っていけ』と声をかけていただけだが、タイムをかけて私が打席に行って直接指導する。ファウルを打った直後に、打席にいって指導する。エラーをした選手にエラーした直後に、そのポジションにいって直接指導する。そうすれば、選手は失敗した具体的要因がすぐ分かり、その場で消化できると思うんです」。その都度、プレーを止めるから時間がかかると言われそうだが「カウント1-1からのルールなので、もともと試合は早いので問題ないです」と笑った。

 選手のレベルアップだけでなく、指導者側のレベルアップにもトライする。これまでも監督同士のコミュニケーションを密にする方法を取ってきたが、あくまで自分のチームの選手を教えることを前提としている。しかし、中野監督はこの新リーグに参加している監督たちにチームの垣根を外してもらうことも考えている。

 「指導者側のやり方も変えてもいいと思っています。例えば、他チームの選手を教えてもいいんじゃないかと。もちろん、相手チームの監督が自分の選手を教えてもいいんです。チームの垣根をとっぱらって、リーグ全体でレベルを上げるためには、多くの指導者の目が合った方がいい」

 選手側もフレッシュさがあり、結果的には指導者側も勉強にもなる。自分1人では限界がある部分を広い目で見てもらうことになり、リーグに所属するチームの選手全員を指導者全員で育てる感覚なのだろう。

 「実際に、東福岡ラグビー部は他校と合同練習を多くするらしく、そのたびに東福岡の指導者が相手選手をどんどん積極的に指導するらしいです。素晴らしいですよね」

 全国で何度も優勝経験がある東福岡ラグビー部の試みに感銘し、互いに高め合うことの重要さに気づいた。

 さらに1年生の底上げも考えている。従来、1年生大会は秋の大会後に開催されている。ほとんど実戦経験がないまま公式戦に突入しているが、環境を変えたいと思っている。

 「ルーキーリーグを作るんです。入学した直後の4月から少しずつ定期的にリーグ戦を行い、経験を積む。その中でレベルアップして11月の大会に臨ませます」

 第2回の福岡リーグは2022年7月から2023年6月までの長いスパンで予定を組む構想がある。「夏の大会前までに終わらせるんですが、最後はリーグ上位による決勝トーナメントで終わるやり方が最高ですね」。中野監督の言葉には夢があふれている。

 参加を希望している高校が増えてきているという。静かながらも着実に福岡の高校野球界に新たな風が吹いている。

(取材=浦田 由紀夫)