昨年は、人類が初めて遭遇した未知の新型コロナウイルスの影響で、多くのスポーツ大会が中止に追い込まれた。

 100年以上の歴史を有する高校野球も、その影響を受けてしまった。甲子園の春のセンバツ大会も夏の選手権大会も、さらには秋の明治神宮大会も中止を余儀なくされた。

 それでも、秋には各県大会が開催され、今春はセンバツ大会も開催することが出来た。例年とは異なる形での開催となってしまったが、それでも、制限はあったものの観客も入った形で開催された。

 そして、大会でのコロナの被害は直接的にはなかった。これは、一つの自信と言ってもいいのかもしれない。

 それを踏まえて、昨年は開催することが出来なかった夏の全国選手権大会も、今は全国各地で、甲子園を目指す戦いとなる大会が進行している。

 とはいうものの、新型コロナの感染状況は一向に収束の気配を見せていない。それどころか、4回目の緊急事態宣言も発せられて、第5波の危険性もあるということで依然、予断は許されない状況である。それでも、選手権の地区大会は全国で中止になることなく進行している。

 しかしながら、各地区大会では、感染による影響で出場辞退に追い込まれたところも出てきているのも現実だ。福井県の福井商、新潟県の中越といった甲子園出場実績のある学校でも、そうした事態に追い込まれてしまった。

 無念の出場辞退は悔しいだろうし、この大会へ向けて高校生活を賭けてきた選手たちにとって無念以外の何物でもないはずだ。

 また、かつて徳島海南時代には全国制覇も果たしたという実績もある徳島県の海部の場合は、「学校が休校になった段階で、大会には出場しない」ということが決められていた。そのため、休校になった段階で方針に従って、大会出場辞退ということになってしまった。

 出来ることならば、何とかして大会には出場させてあげたいというのは、見守る大人の立場からも切実なる思いでもある。

 そんな中で、鳥取県では春の県大会で優勝し、今夏の県大会でも優勝候補筆頭だった米子松蔭が、学校関係者の1人が新型コロナウイルス感染が発覚した影響で、初戦目前に出場辞退を申し出た。感染者が出た場合の鳥取県高野連の規定に従った処置ではあったが、選手らは泣き崩れたという。

 しかし、その後、キャプテンのTwitter投稿をきっかけに事態は一転した。19日夕方、鳥取県高校野球連盟と朝日新聞鳥取総局の会見が開かれ、21日に米子松蔭と堺との初戦が行われることが発表された。

 この一件については世論の後押しや著名人のコメントも相次ぎ、米子松蔭野球部たちの思いに応え、出場が実現した形となったが、何より柔軟な対応を見せた主催者に敬意を評したい。

 コロナの感染状況も日々変わっている。対応策も日々変わっている。その中で、ルールも決断も柔軟に変えていく。

 今後の大会運営に一石を投じた英断となった事は間違いないだろう。

 今後、各野球部において万が一、陽性者が出たとしてもチームの出場辞退を回避する方法はないものだろうかという視点で改めて考えてみた。

 もちろん、各案についての批判の声もあるだろうが、ここまで頑張ってきた選手たちに何とか、試合に出てプレーしてもらう方法はないか?という野球記者たちによる一案である。

・大会前など高校球児含め、大会目前の部活生などを優先してのワクチン接種

・オリンピック選手のように試合直前のPCR検査を行い、万が一、陽性の選手が出た場合は登録選手の変更などを当日でも可とする。

等等。

 とはいえ、『学校としての感染防止対策の徹底』そして『個々の管理』ということが現実的な方法ではあるのかもしれないが、これ以上、大会途中での出場辞退校が出てこないことを祈るしかない。

 それぞれが、大会成功のために万全の対策を練りながら、努力していく。それでも、相手は見えないウイルスである。万が一のことが起きてしまったら、仕方のないことである。

 現実を受け入れた上で、ベストの選択は何かを前向きに模索していく姿勢を示していくことが、次の世代へつなげていかれるのだと信じていくことしかない。

(執筆協力=手束 仁・他編集部)