<高校野球秋季神奈川大会:横浜9-0横浜隼人>◇6日◇準決勝◇横浜スタジアム

 横浜が3年連続となる秋季大会決勝進出。手繰り寄せたのは今春からエースナンバーを背負う奥村 頼人投手(2年)だった。

 関東大会出場へ負けられない一戦に「ここ一番の試合だったので、自分が投げて試合を作りたかった」と意気込みマウンドに上がった。得意のスライダー、チェンジアップを巧みに使い、5回を1安打無失点に抑えてチームの勝利を呼び込んだ。

 奥村は試合後、「散々負けてきたので、いい思い出は全くないです」と口にした。それもそのはず。この日の会場となった横浜スタジアムは、今年の春夏で東海大相模と対戦し、いずれも敗れている場所であり、奥村にとっては辛酸をなめたマウンドでもあるからだ。

 春は終盤まで1点差の好試合を演じたが、9回に今秋のドラフト上位候補としても名前の挙がる藤田 琉生投手(3年)に三点本塁打を許して敗戦。夏の決勝戦でも8回に窮地を作ったところで降板し、後に逆転を許して惜しくも甲子園出場を逃すなど、苦しい結果が続いた。

 新チームとなり、悔しさを晴らすべく、毎朝30分早くグラウンドへと向かい、高山 大輝コーチと二人三脚で走り込みやアメリカンノックに取り組んだ。「試合より練習の方がきつい」というほど自身を追い込み、「野球の技術だけでなく、練習をしてきたことが自信になり、いい投球に繋がっている」と精神面も鍛えられているという。

 練習では、「またハマスタで負けるのか」と高山コーチからも激が飛ぶ。厳しい言葉を燃料に、自身を奮い立たせ迎えたこの日のマウンドで快投し、「冷静に投げていたし、成長している」と指揮官の村田 浩明監督も称賛した。さらには打つ方でも自身を援護する1安打2打点の活躍。勝利への思いをバットに乗せた。

「二度あることは三度あると言わせない」。並々ならぬ覚悟を語ったエース左腕の活躍から目が離せない。