<秋季東京都高校野球大会:明大八王子6-2東京成徳大>6日◇1回戦◇スリーボンドスタジアム八王子
明大八王子のアンダースロー、上原 和玖(2年)は、1年生の夏から登板し、経験を積んできた。しかしこの夏は背番号5で三塁手を兼ねるなど、エースという存在ではなかった。新チームになり椙原貴文監督から、「お前しかない。打たれても、投げさせる。やってくれると思う」という熱い期待を受けて、背番号1を担った。
木製バット時代には多くいたサブマリンの投手は、50年前に金属バットが導入され、バットの芯が広くなったことから、球威がそれほどないアンダースローは徐々に減少し、一時は絶滅危惧と言われたこともあった。けれども近年、複数投手が一般化し、多様な投手が求められること、それに今年から低反発バットが導入されたことで、アンダースロー投手の特性が生かされるようになってきた。
上原の最速は120キロ台だが、カーブ、シンカーなどの遅い変化球も効果的に使って打者のタイミングを外し、東京成徳大打線を翻弄。序盤3回を1人の走者も出さない完璧な投球をした。
一方東京成徳大の先発、左腕の上野 陸(2年)も夏を経験しており、好投手だ。2回裏には明大八王子打線を三者三振に打ち取るなど、快調な投球。その投球をみた明大八王子の上原は、「むしろ集中することができました」と語る。
3回裏明大八王子は7番・村松 凛太朗内野手(1年)から8番・佐野 孝太外野手(2年)、9番・山村幸太郎 内野手(1年)、1番・木下 夏葵外野手(2年)の4人連続安打で3点を入れる。5回、7回、8回にも1点を追加し、明大八王子が6点をリードする。
こうなると、「力感なく、いい意味で嫌らしいピッチングをしたいです」という明大八王子の上原が目指す投球が威力を増してくる。投手出身の椙原監督に加え、3月からコーチに就任している明大OBで、ロッテなどでもプレーした関谷亮太氏(日大三)の指導も受け、投球術もさえる。
ただ9回表は東京成徳大打線につかまり、2点を失う。「今まで完投はありますが、完封はなかったので、意識してしまいました」と上原は言う。それでも9回に2安打を打たれたものの、9回投げて被安打は4、失点は2の完投。9回を除けば、ほぼ完璧な投球であった。1回戦の勝利を受けて上原は、「これからもチームのために、勝つピッチングをします」と語る。
明大八王子は、2回戦は元国士舘監督の名将・永田昌弘監督率いる明星と対戦する。