軽さは正義みたいなもの

私は学生時代、スパイクを買う時はいつも思っていた。「軽いスパイクはどれだろう」と。特に短距離はどうしても加速できず、足に自信を持てていなかった。だから余計に少しでも軽いスパイクを履いて、動きやすさを追い求めた。

この発想は今の球児も変わらない。現場に行って話を聞けば、「軽いスパイクは選ぶ時のポイントです」というような声がほとんど。今も昔も球児たちにとって、軽さは正義みたいなものだと常々思わされる。

時代のニーズは足を使う野球?

実際、野球のプレーで考えても、足の速さは大事な能力だ。

打者走者が内野安打をもぎ取るのに、目指すタイムは約4秒とされている。NPB選手の一塁到達タイムを見ても、紹介される選手は4秒を切ってくるのがほとんどとなっている。加えて2024年より正式移行となった新基準バットにより、飛距離が出しにくくなった。純粋な打力だけで長打を出すのは難しくなった。

いかに走力を使って長打にするか。足を使って攻撃力、得点力をどう伸ばすのか。走力の重要性が、再びフォーカスされる時代になりつつあるといっていい。そうしたことを踏まえると、選手たちが求める軽いスパイクは、まさに時代のニーズと言ってもいい。

塁間のスピード向上に特化した軽さとやわらかさ

スポーツメーカー・アシックスが2024年春から発売を開始した「GOLDSTAGE I-PRO MA 3(以下、MA3)」は、まさにトレンドにマッチしたスパイクとなっている。

自社で販売しているスパイクのなかでもトップクラスの軽量感と称されているMA3。実際に手に取ってみると、「かる!」とあまりの軽量感に驚きの声が多く聞こえた。と同時に、軽量感からこみあげてくる高揚感に、思わず笑みをこぼしている表情も見られた。

しかし、軽量感を特長にしたスパイクならば、様々なメーカーが販売している。軽量感を前提に、もう1つの特長を加えなければ差別化は難しい。そのなかでMA3が掲げたコンセプトは、塁間のスピード向上だ。

このコンセプトを実現するのに、MA3にはさまざまな機能をつぎ込んでいるわけだが、実際に使った選手たちにしっかりと届いているようだ。

「ランナーをやっていても、一蹴り、一蹴りでどんどん前に進めている、地面をしっかり蹴れている感じがあって走りやすい印象です。動いているうちに段々スピードに乗れてきた感じで走りやすいし、動きやすかったです」(選手A)
「母指球あたりに金具が4本あったおかげで、しっかり地面を噛んで、蹴れて走りやすいです」(選手B)
「軽いスパイクの方が動きやすいのでよく選ぶんですが、MA3は持った瞬間から普段より少し軽いように思いました。しかも反発があるおかげか、セカンドの守備についても一歩目から素早く出せた感じるくらい走りやすいと思いました」(選手C)

軽い、走りやすいということは十分わかった。一方でMA3を履いた選手のなかには、「アッパー(足の甲)部分が薄いので、破けてしまうか心配になった」と不安視する声もあった。

軽さを実現するには何か工夫は必要なわけで、今回のMA3は軽量化のためにアッパーを薄く、そして靴底の樹脂量を減らしている。そうすると耐久性に対して疑問を持つ人がいるのも当然だ。しかしアッパー部分の薄さに対しては、好評の声ももちろんある。

「アッパー部分の素材がやわらかかったので、いつもよりもフィット感が良かったと思います」(選手D)
「普段使っているスパイクよりも素材がやわらかいので、自分の足にあわせて広がっている感じがして、フィット感が良いです。重さもそれほど感じないので、素足だと勘違いしてしまうくらい違和感がないです」(選手E)
「走ったり、踏ん張ったりと、動くことに置いてアッパーがやわらかいので、足がしっかり曲げて地面を蹴ることができてよかったです」(選手F)

軽さはもちろん、速さもある。それがMA3だ。足をアピールポイントにしている選手はもちろんのこと、足に自信がない選手もMA3は心強い味方になるだろう。足元を支える新たな相棒として、MA3が全国各地のグラウンドを駆け回るのは、そう遠くないことかもしれない。