ベストマッチは則本と松葉が投げ合った2012年の三重中京大対大阪体育大
個人的にこの50余年の中で、忘れ難いゲームがいくつかある。
1975年の決勝、大阪商業大のエース・斉藤 明夫(花園出身、大洋)が、「駒大三羽ガラス」と呼ばれ、この年揃って巨人に入団した中畑清(安積商=現・帝京安積)、二宮 至(広島商)、平田 薫(坂出工、巨人-ヤクルト)を擁する駒澤打線に挑み0対1で惜敗した試合や、2002年松坂世代が勢揃いした大会はどれも好ゲーム、特に決勝の亜細亜大・木佐貫 洋(川内、巨人)と早稲田大・和田 毅(浜田、ダイエー=現ソフトバンク他)の息詰まる投手戦(2対1で亜細亜大の優勝)はいまだに瞼に焼き付いて離れないが、なんと言っても2012年の1回戦、三重中京大対大阪体育大の試合が自分の中のベストマッチか。
三重中京大のエース・則本 昂大(八幡商、楽天)と大阪体育大のエース・松葉 貴大(東洋大姫路、オリックス-中日)はお互い譲らず、延長10回タイブレークの末、2対1で大阪体育大に軍配が上がったが、この日の則本のピッチングは凄まじく、切れ味鋭い高速スライダーと150キロ超のストレートで奪った三振は20個を数えた。大会前まで則本はまだスカウト陣から特別に評価、注目された存在ではなく、この日こそがまさに人生逆転の分岐点になったのは間違いないだろう。プロ入り後は同じパ・リーグだったので、稀に2人が投げ合う時にはひそかにテンションが上がったものである。
今年のドラフトの目玉である関西大・金丸 夢斗(神港橘)、愛知工業大・中村 優斗(諫早農)の姿は残念ながら拝めないが、則本のように本大会をステップに「確変ブレイク」する選手が出てくることを心待ちにしたい。