<文部科学大臣杯第76回全日本大学準硬式野球選手権大会:法政大2-1早稲田大>◇25日◇2回戦◇さがみどりの森県営野球場
24日から始まった文部科学大臣杯第76回全日本大学準硬式野球選手権大会。2回戦屈指の好カードなった、東京六大学でも対戦する法政大と早稲田大による東京六大学決戦。試合は法政大が2対1で勝利となり、ベスト8進出となった。
1対1で迎えた6回、法政大が1番・岩谷 波瑠外野手(1年=遊学館出身)の二塁打などで一死3塁の場面を作る。ここで3番・関宮 楓馬外野手(4年=静岡出身)のスクイズで勝ち越し。このリードを7回途中から2番手としてマウンドに上がった藤中壮太投手(4年=鳴門出身)の好投で死守。2022年以来となるベスト8進出となった。
指揮官・本間隆洋監督が「ベストゲームでした」と絶賛した1回戦・京都産業大戦に続いて1点差での勝利。粘り強い戦いが続いているが、その中心はエース・藤中であることは間違いない。
藤中に対しては本間監督も、「(藤中には)勝っているうちは、『5連投で行くぞ』と伝えています」という信頼ぶり。下級生から大車輪の活躍をし続けてきたエースへの思いが強い。だから、「1回戦は中断が2度ありながら、よく投げてくれましたし、今日も魂の込めた投球でした」と称賛の声を送るほどだ。
そんな藤中、この試合は7回途中からマウンドに上がり、一死1、3塁のピンチを招いたが、後続を打ち取って無失点。8回も先頭打者を四球で歩かせながらも、「苦手意識がありました」という6番・岡田 和也外野手(4年=国学院久我山出身)を自慢のツーシームでセンターフライ。「狙い通り投げられた」という渾身の1球で仕留めて、そのまま9回も0点でまとめた。
藤中にとっての必殺球でもあるツーシーム。特に左打者には非常に有効的な球種になっているが、誕生の裏側は意外なエピソードがあった。
「鳴門時代はスライダーとフォークを使っていました。ただ『準硬式ではツーシームが有効だ』と先輩から聞いたので、『自分で研究して、オリジナルを作ろう』と思って、遊び感覚で始めたんですよ。それこそ、最初はスプリットのつもりで適当に挟んで投げていたんですけど、そしたら思った以上に曲がってくれて。気がついたら、スライダーやフォークよりも武器になっていて、『この球があればいける』ってくらい信頼しています」
魔球・ツーシームを武器に、準々決勝以降もフル回転で投げる藤中。当然、連投による疲労はある。「連投ができるようにトレーニングやケア、試合経験も積んできた」と分析するが、一番は後輩の好投、そして今大会にかける思いが、自身を奮い立たせている。
「そもそも今大会は学生生活、そして野球人生の集大成として、『絶対日本一を獲りたい』と思って挑んでいます。そのためには5連投だってやりますし、悔いが無いように投げたいと思っています。今日に関して言えば、先発した村越(仁士克)がピンチ背負いながらも1点で凌いでくれていたので、エースである自分が勝ち越しを許すわけにはいかない。村越からも『お願いします』って託されたので、自分が村越のプレッシャーを背負って抑えるつもりでマウンドに上がりました」
「立場が人を育てる」、という言葉があるが、藤中はまさにそうだろう。エースとしての責務、そして自身の野球人生のために、藤中は最後まで気持ちを込めて右腕を振る。