<文部科学大臣杯第76回全日本大学準硬式野球選手権大会: 法政大5-7九州産業大>◇27日◇準決勝◇さがみどりの森県営野球場
佐賀県を舞台に熱戦が連日続いている文部科学大臣杯第76回全日本大学準硬式野球選手権大会(以下、全日大会)。27日の準決勝では、九州産業大が法政大に勝利した。
1回戦から準々決勝まで、全て1点差で勝利する我慢強さが光った法政大だが、準決勝は立ち上がりから攻められた。
エース・藤中壮太投手(4年=鳴門出身)を先発させるも、2回持たずに降板。続く村越 仁士克投手(2年=日本文理出身)も5回で降板。その後、持ち直したが、勝ち越すことができず、4強で姿を消した。
「最後、フライがキャッチされるまで諦めていませんでした。『まだ勝てるぞ』って思っていました。負けが決まった瞬間は悔しかったですけど、全国ベスト4まで勝ち上がれたのは良かった、とも思いました」
そう振り返ったのは法政大の関宮楓馬主将(4年=静岡出身)。この試合途中交代でベンチに下がり、最後はベンチから仲間たちを応援していた。
九州産業大との一戦、2つのバントを成功させたが、残りは2つの空振り三振。今大会は準々決勝までの3試合でヒット3本と、打率3割の成績を残して勝利に貢献していたが、決勝には導くことができなかった。
「新チーム発足時に、『全日大会出場』を目標にしたので、決勝には届かなかったかなと、正直思います」と、この1年間を振り返った。
些細なことのように思えるが、関宮にとって準備がどれだけ大事なのか。春夏合わせて43回の甲子園出場経験を持つ名門・静岡での3年間で学んでいたからだ。
「自分も凄く大切にしている言葉ですが、恩師がよく言っていたのは、『勝負は準備で8割決まる』って言葉なんです。やっぱり、試合になったら、くよくよしてもしょうがないので、勝負や試合の結果は、その前の準備段階で8割決まるって意識しています」
実際、全日大会出場に向けて準備を進め、3月の関東選手権では準優勝。全日大会をかけた予選会への出場権を掴み、予選会でも結果を残してしっかりと目標を達成。そこからは、全国制覇に上方修正させて、大会までの準備期間を過ごした。
「強豪校とオープン戦を組んだり、酷暑で5連戦を戦いきる体力・集中力を鍛えたりして、全国で勝てるチームを作ってきました。それもあってか、今大会も1点差の試合が続きましたが、全員が一丸となって本気で勝利を目指して戦いきれました。試合を重ねるごとに強くなれたと思います」
静岡時代に甲子園に出場した経験も生かして、「宿舎の過ごし方を含めて、トーナメントで勝ち上がっていくために必要なことをやった」と全てをかけて戦った。それでも、日本一には届かなかった。
ケガなどを理由に、関宮は準硬式の道に進んできた。高校時代は聖地・甲子園を知る実力者だが、もちろん同級生のなかには硬式野球を継続している選手もいる。ほんの少しでも後悔があるかと思われたが、「準硬式を選んだことに悔いはありません」と関宮は断言する。
「高校時代は甲子園っていう最大の目標、みんなにとっての夢舞台、目指してきた場所です。大学だと神宮とかになると思いますけど、大学準硬式は決まったところはありません。けど、全国大会であることは変わりありません。だから高校時代と変わらず、身の引き締まる思いで、『絶対に勝ってやるんだ』って思いで、戦っていました」(関宮)
だから準備を怠ることなく、最善の手段を講じて全日大会を戦い切れたのだろう。
実は本間隆洋監督も、「硬式だろうと、準硬式だろうと、野球に差はなし」と関宮と似たようなことを話していた。多少の違いはあれど、同じ野球というスポーツであることを訴えていた。
なかなか高校野球と全く同じようにとはいかない。でも、大学準硬式にだって、真剣勝負の世界はある。準々決勝まで1点差、準決勝も2点差の熱戦を見せた法政大の戦いぶりは、その証拠になるはずだ。
この後控える秋季リーグにも出場予定だという関宮。集大成はもう少し先になりそうだ。