<第155回九州地区高校野球大会鹿児島県予選:鹿児島実3-1国分中央>10日◇準決勝◇平和リース球場
鹿児島実は初回、二死二塁から4番・前田 大成(2年)が左越え二塁打を放って先制。続く5番・鶴本 晴斗(1年)も右前適時打で続いて、幸先良く2点を先取した。
2回以降は国分中央のエース川瀬 聖智(2年)の緩急を生かした丁寧な投球の前に好機をなかなか作れなかったが、6回表に二死満塁として7番・吉田 晴空(2年)が右前適時打を放って貴重な追加点を得た。
2回以降は毎回走者を出し、再三得点圏にも走者を進めた国分中央だったが、鹿児島実のエース・大野 純之介(2年)の前になかなかあと一本が出ない。
それでも7回裏、一死一三塁として1番・柿ノ迫 英汰(1年)の内野ゴロで1点を返す。9回裏も簡単に二死となってから四球、連打で満塁と一打同点、逆転の好機を作ったが、最後まで大野を攻略できなかった。
大野 稼頭央(現ソフトバンク)、幸乃進(現青森大)。大島のエースとして活躍した兄たちと同じ勝負師の「遺伝子」は、三男・純之介も間違いなく受け継いでいた。毎回のように訪れたピンチをことごとくしのぎ、完投勝利で決勝進出に貢献した。
得点は1回と6回の好機に挙げた3点のみ。2回以降は毎回走者が出て、再三得点圏に背負う苦しい投球が続いた。
稼頭央も幸乃進も、最速140キロ台の直球を持っていた。プロ入りした稼頭央はいざとなれば三振をとれるボールがあった。純之介の最速は130キロを超える程度だが、抜群の野球センスで相手の狙いを読み「三振ではなく打たせてとる」のが最大の持ち味だ。
圧巻だったのは4回裏一死一三塁の場面。初めて三塁に走者を背負って、5番・豊田 悠馬(2年)、6番・稲田 煌志(2年)と相手の要注意打者を、内角の力のある直球で追い込み、外のチェンジアップで連続三振に仕留めた。「自分が一番自信のあるボール」と胸を張った。
中盤以降は疲れもあり、味方の援護もなかなかない中で力投が続く。この秋の新チームは「鹿実史上最弱」と宮下 正一監督から厳しい言葉を投げかけられた。今夏はベンチ入り20人をオール3年生で臨んだため、試合経験が極端に少ない。「だからこそ、こういう厳しい試合を経験することが自分たちの成長につながる」と純之介。7回に1点は失ったが、丁寧に低目、コースを厳しく突く投球が最後まで途切れなかった。
「最弱」だからこそ「こういう厳しい試合は『最強』に成長するための最高の舞台」と宮下監督。純之介は昨秋の県大会3回戦の鶴丸戦で敗戦投手になった苦い思い出がある。「自分がチームを引っ張ってセンバツに導きたい」想いを胸に秘める。その「第一関門」を見事突破した。