今治西が小松に1点差で競り勝ち、秋季四国大会の出場を決めた。
タレント豊富な小松に勝利し、3年連続となる秋季四国大会の切符を掴んだ今治西。1年生左腕・榊原 綜太投手が連投の疲労か、最速138キロのストレートが132キロに留まるも、要所で110キロ後半のチェンジアップを駆使し154球6安打9奪三振4四球で2失点完投に抑えた。勝利をもたらした功績はもちろん大きいが、スタメン9人中わずか2名の2年生も奮闘。中でもこの試合で目を引いたのは名門社会人野球チームヘッドコーチを父に持つ「2番・二塁手」四之宮 仙門内野手(2年)であった。
四之宮の父は1995年のセンバツ大会で今治西を4強に押し上げた四之宮 洋介氏。青山学院大―日産自動車でも2009年の硬式野球部休部まで主力として活躍し、当時社会人野球選手がトップだった日本代表でも主将を歴任。来年16年ぶりの復活を遂げる同部でのヘッドコーチ就任が決まっている、いわゆるアマチュア野球界のレジェンド的存在である。
仙門自身は、芹が谷中(神奈川)時代に四国アイランドリーグplus・徳島インディゴソックスを独立リーグ日本一に導いた養父 鐵氏がGMを務めるヤングROOTSでプレー。「中学3年で野球を辞めようと思った時、養父さんが僕に向き合って接してくれた」と話し、「他の学校では経験できないことがある」と、父の母校だった今治西へ越境入学を決意。ベンチ入り20名がオール3年生だった旧チームから装いを一気に変えた現チームでは「活力を与えようとしている」意気を、アグレッシブな守備とドラックバント含む粘り強い打撃で表現した。
加えてこの試合では父からの金言も活きた。6回裏二死二塁の場面で左打席に入った四之宮は、「相手の気持ちを受けず、前に重心を残しながら触れる準備をして、思い切り引っ張りに行く。だから少し振り遅れても逆方向に強い打球が飛ぶ」とう父親の打撃理論を体現し、三塁手のグラブを弾く決勝適時打を放ってみせた。
かくして仙波 秀知監督が、「厳しいことに取り組んで1個ずつやれることを増やしてきた」と話す成果を次ステージへとつないだ今治西。秋季四国大会でも四之宮 は主将の越智 柚貴内野手(2年)と共にチームの歯車となり、父が示した不屈の精神で1戦1戦を丁寧に闘っていく。
また、惜しくも敗れた小松もこの大会では右オーバーハンドの定成 悠信投手(2年)が最速141キロ、右スリークォーターとサイドハンドを投げ分ける村上 颯希投手(2年)が最速140キロをマーク。ダブルエースの充実ぶりは古本 裕大投手(現・亜細亜大=3年)らを擁して秋季四国大会4強に入った4年前とそん色ない。
宇佐美 秀文監督は今大会を振り返り「この時期に140キロを超える投手が2人いるのは大きい」と、投手陣の充実は認める半面、「打線が厳しい」と課題を口にする。俊足強肩の1番・近藤 城太郎内野手(2年)や、一塁手と中堅手をソツなくこなす身長180センチの左大砲・久米 叶太選手(2年)など、潜在能力の高い野手は数多い。彼らにはこの悔しさをぜひ春以降の飛躍へとつなげてほしい。