東北工業大戦で勝ち点を落とし、最終節での連勝が優勝への絶対条件となった仙台大は、最終節・東北福祉大戦の初戦に勝利し逆王手をかけた。
0対0の6回、5番・田口 大智内野手(4年=田村)が右翼席へ運ぶ3点本塁打を放ち先制。先発の渡邉 一生投手(3年=日本航空/BBCスカイホークス)は7回途中4安打9奪三振無失点と粘投し、その後は3投手の継投で完封リレーを完成させた。
渡邉は計5四死球を与え、三者連続三振に抑えた6回以外は毎回走者を許す苦しい投球を強いられた。最大のピンチは3回。2死満塁で迎えた打者のカウントが3ボールノーストライクとなったが、渡邉は冷静だった。
「自分の中で、厳しいコースに投げた上での四球はOKというイメージを持っていました。ランナーが出るのは想定内だったので焦りは一切なく、満塁になっても抑えられると思っていました」
この場面では3球連続でチェンジアップを投じ、空振り三振に仕留め本塁を踏ませず。その後も我慢の投球を続け、田口の一発を呼び込んだ。
常時150キロ前後を計測する直球が目立つが、チェンジアップも以前から得意球としていた変化球。今夏、侍ジャパン大学日本代表に初選出され、国際大会の試合でも有効的に使えたことから、「(チェンジアップが)世界に通用する」と実感した。「ゾーンに投げ切れたら絶対に打たれない自信がついた。チェンジアップは『お守り』みたいな球です」と渡邉。「意思疎通できていた」という女房役・井尻 琉斗捕手(2年=北海)のミット目がけて迷うことなく投げ切った。
国際大会で遠征したオランダとチェコは渡邉にとって初の海外だったこともあり、帰国後はコンディションの調整に手を焼いた。今秋のリーグ戦は中継ぎスタートで、第2節の東北大戦は先発として6回10奪三振1失点と好投。しかし、続く東北工業大戦は球が走らず3回途中で降板すると、前節の東北学院大戦は登板機会がなかった。
中でも東北学院大戦はチームが接戦を繰り広げる中でマウンドに上がれず悔しい思いをしたが、「最終節に照準を合わせよう。ここは仲間に任せて、最後に自分が4年生を勝たせる」と気持ちを切り替えた。まだ本調子に戻ったとは言えないものの宣言通り勝利に貢献し、テーマに掲げる「150キロが出る変化球ピッチャー」の真髄を見せつけた。
この日はライバル視している同学年の東北福祉大・堀越 啓太投手(3年=花咲徳栄)が150キロ台を連発し、3回7奪三振パーフェクトピッチングを披露。渡邉は「堀越がすごいのは分かっている。明日も投げる機会があれば、あいつよりすごいピッチングをしたい。球速では勝てなくても、抑える能力では負けません」と鼻息を荒くした。
仙台大は13日の2回戦にも勝利すれば逆転優勝が決まる。敗れた場合はこのカードの勝ち点にかかわらず勝率で上回る東北福祉大が優勝する。