勝った方が頂点に立つ天王山。仙台大が東北福祉大を破り、2季連続11度目のリーグ優勝を決めた。

 1対1で迎えたタイブレークの延長10回、仙台大は無死一、二塁から代打・唐澤 愛斗捕手(4年=前橋商)が犠打を試み、相手投手の三塁への悪送球を誘発。その間に二塁走者が生還し、サヨナラ勝ちを収めた。

 先発のルーキー左腕・大城 海翔投手(1年=滋賀学園)は「井尻さん(琉斗捕手・2年=北海)が構えたところに投げるだけ」と淡々と投げ続け、再三走者を出しながらも7回9奪三振1失点と好投。佐藤 幻瑛投手(2年=柏木農)とのリレーで最少失点に抑え、勝利を呼び込んだ。

 大ピンチをしのいでも表情を変えず、淡々と投げる姿は、前日好投した大学日本代表左腕・渡邉 一生投手(3年=日本航空/BBCスカイホークス)とは対照的だった。大城は以前、「感情を出すのが難しくて、一生さんのように出そうと思っても出ない。同じ左で身長も近い一生さんを目指してフォームやトレーニングを参考にしていますが、そういった面ではタイプが違います」と話していた。

 昨年は滋賀学園でエースを務め、仙台大では1年目から第一線で活躍。今春は全節で先発して3勝、防御率1.38と好成績を残し、全日本大学野球選手権でも九州産業大戦の先発に抜擢され7回3失点の粘投を披露した。

 高校時代の最速は140キロに満たなかったが、大学では「周りに速いピッチャーばかりいるので、一緒に練習していたら自然と速くなりました」。今春はリーグ戦で投げるたびに自己最速を更新し、短期間で145キロまで伸ばした。6種類の変化球(カーブ、スライダー、カットボール、チェンジアップ、スプリット、ツーシーム)も精度が高い上、制球力もあり、1年生ながら完成度の高い投手だ。

 今秋に向けては「高校まではやっていなかった」というウェートトレーニングに励んだ。体重が春より5キロ重い75キロまで増えたことで平均球速が上がり、球の質も向上。今秋は中継ぎも経験し先発はこの日が2度目だったが、7回131球を投げて終始、球速は140~145キロを維持しており、春からのさらなる進化を見せつけた。

 大一番での好投が評価されてのMVP受賞には「びっくりしました。勝っていないし、自分でいいのかな」と驚いた様子。ただ、「守り勝つ野球」を得意とする仙台大に欠かせない投手であることは間違いない。26日に開幕する明治神宮大会東北地区代表決定戦でも「いつも通り、テンポの良いピッチングをするだけ。思い切って投げます」と平常心を貫くつもりだ。