◇秋季東京都高校野球大会2回戦◇早稲田実5-2修徳◇スリーボンドスタジアム八王子◇13日

 昨年くらいから早稲田実は「逆転の早実」と呼べるほど、リードされても試合をひっくり返す粘り強い野球をするようになってきた。この試合もまた、早稲田実の粘り強さが光る一戦になった。

 逆転の主人公は、都内屈指の本格派左腕・中村 心大(2年)だ。夏からエースとして活躍した中村は主将に就任した。1回表から修徳の攻撃を三者三振という快調な立ち上がりだった。しかし2回表は修徳の4番・阿出川 蓮土内野手(2年)の二塁打に続き、5番・岳原 雄大内野手(2年)の四球などで一死一、二塁となり、そこから重盗をしかけ二、三塁となる。ここで先発投手でもある7番の築田 駈翔(2年)のスクイズに失策が絡まり、修徳が1点を先制。ただ二塁走者の岳原も本塁を突いたが、これは刺された。けれども8番・野々山 歩大内野手(2年)の二ゴロは失策となり、二塁に進んでいた築田が本塁を突いて間一髪セーフ。修徳は早稲田実内野陣の乱れもあって2点を先制した。「初めて出る子たちは、ドキドキだったみたいです。内野は全部変わりましたから」と早稲田実の和泉実監督は言う。

 この秋の早稲田実は、エースの中村に捕手の山中 晴翔(2年)をはじめ夏を経験している選手は多い。しかし内野の各ポジションは、新チームになって初めて経験している選手が多い。甲子園で勝ち進んだ分、新チームでの経験は不足しており、その懸念が出た形だ。

 失策絡みで2点を失った中村は、「甘さが出てしまいました」と語る。それでも「最後まで諦めない姿勢など、3年生から多くのことを学びました」と中村。ここから圧巻の投球を繰り広げる。5回裏、7回裏を三者三振に抑えるなど、奪三振は14。6回表は連続安打を打たれてピンチを迎えたが、得点は与えない。

 しかし修徳の築田の投球も素晴らしかった。早稲田実は7回まで安打はわずかに2本の無失点に抑えられた。「いいピッチャーでしたね。スライダーにもキレがありました」と早稲田実の和泉監督は言う。和泉監督は「とにかく我慢しよう」と選手に言った。主将の中村の投球は、まさに我慢の投球であった。中村は、3回以降は得点を許さず、味方の反撃を待った。

 そして8回裏早稲田実の攻撃も、あっさり二死になった。修徳はここまで、築田の好投に加え、二塁手の阿出川をはじめとする内野陣の堅い守りで中村を助けていた。しかし二死後、早稲田実の1番・山中の左前安打の後、四球が2つ続き、満塁となる。続く4番・川上 真内野手(2年)は遊ゴロ。けれども遊撃手の失策で2人が生還。同点に追いついた。なおも二死二塁で、打席には好投している5番の中村が立った。ここで中村は左前安打を放ち、二塁に進んでいた川上が生還し、早稲田実はこの試合で初めて修徳をリードした。「喜澤(俊太)が当たっていたので、つなぐ気持ちで打席に入りました」と中村は言う。7回まで早稲田実が放った2本の安打は、いずれも喜澤(2年)が放ったものだった。そして7回の打席で喜澤は二塁打を打ち1点を追加。さらに1点を加え、この回、一挙に5点が入り、試合をひっくり返した。

 9回表修徳は5番・岳原が二塁打で出塁したが、岳原は三盗に失敗し万事休す。早稲田実が逆転で修徳を破った。

 早稲田実は夏の大会も出場していた三澤 由和外野手(2年)が足の負傷で出場できないなど、ベストの状態ではない。それでも苦しい試合を逆転で物にするところに、このチームの底力がある。特に主将でエースの中村が甲子園で急成長している。この秋の東京も、早稲田実が優勝候補であることは確かだ。けれども真の実力をつけていくには、実戦をさらに経験していく必要がある。3回戦は昭和と対戦する。