高校野球と校歌。切っても切り離せない関係だ。
高校生活の中で校歌を一緒に歌う、あるいは校歌に感動する機会は、それほどあることではない。甲子園という特別な舞台で歌われる校歌は、格別の意味がある。学校側としてもメディアを通じて全国に流されることで、同時に校名も知らされていくのだから、まさに“校歌の効果”は大きいのである。
校歌と言うと、七音五音を基調として、いささか文語調の言葉が並ぶ特徴がある。そこに当てはまらないような校歌が流されると「校歌らしくないなぁ」などと言う声も聞かれるものだ。
そんな中で、今夏ネット上で注目されたのが、和歌山南陵の校歌だ。いわゆる「レゲエ校歌」。ストレートなメッセージと、その曲調は多くの若者には受け入れやすいものだという意見もあった。作詞はミュージシャンの横川翔とWARSAN。内容は〈一歩前へ 一歩前へ〉と繰り返して、今の自分よりも前へ進んでいこうというもの。曲調こそ今風と言えるのかもしれないが、実は歌詞の内容としては校歌っぽいとも言えようか。
共学化や校名変更を機に生まれるケースの多い新校歌
ほかにも特徴のある校歌を紹介していこう。
最近創立された学校や共学化された学校に“面白い”校歌は多い。POPミュージック調に仕上がっているモノや、そのジャンルの著名人に作詞作曲を依頼してその特色を出しているものなどが見られる。
まずは、群馬女子短大附から母体の大学が2001年に共学校となったことで現校名となった健大高崎。
校名変更に伴い校歌も新設した。『Be together~みんなだれかを愛していたい』というタイトルまでつけられている。NHKの『みんなのうた』を手掛けている冬杜花代子氏の作詞で、『もしもピアノが弾けたなら』などのヒット曲がある坂田晃一氏が作曲。曲も比較的長く、最初は少し耳慣れないかなという印象もあったが、今ではすっかり定着している。試合前のシートノックで校歌が流される群馬県大会では、『Be together……』が流れてくると「健大高崎の試合だな」とすぐにわかる。今春のセンバツを制した時には、SNSでトレンド入りした。
大分県の明豊は、別府大附と明星の学校法人が合併して1999年に現明豊となって新たに誕生した際、大分県出身のミュージシャン・南こうせつ夫妻が校歌を作詞作曲。ポップ調なものとなり、ベスト8まで進出した2001年夏の甲子園で大きな話題になった。
2011年夏と2017年春に甲子園出場を果たした愛知・至学館の校歌も『夢追人』とタイトルがつけられていて、いわゆるPOP調の語りのような曲である。2005年に前身の中京女子大が共学校となり至学館と名称が変わったことにより、付属校もその校名が変更されたのだが、『夢追人』は本来、校歌として制作されたものではなかった。同大出身の女子レスリング選手・伊調馨と吉田沙保里が、2004年のアテネオリンピックでメダルを獲得したことを祝して制作されたものだと言われている。それを理事長が補作して校歌に制定された。こちらも、愛知大会勝ち進むたびに話題となり、甲子園で2回の攻撃前に流されて大きな反響を呼んだ。