この夏の大会も全国最多の173チーム(181校)が出場した愛知大会。激戦を勝ち上がったのは、7年ぶりの出場となった中京大中京だった。

 優勝決定の表彰式の後に、「7年は、長かったです…」と、しみじみと語った高橋源一郎監督の言葉には重みと説得力があった。

 そんな中京大中京は、明日第一試合で宮崎商との初戦を迎える。

中京大中京史上最強チームはコロナで甲子園中止に…

 昨秋は愛知県大会3回戦で敗退してしまい、ベスト8にも届かなかった。さらに今年の春季県大会名古屋地区二次トーナメントではライバル・東邦に0対7とコールド負けも喫した。県大会出場権は既に得ていたとはいえ、完封でのコールド負けは厳しい現実として受け止めなくてはいけなかった。

 そこから中京大中京は、一度チームを作り直して、県大会では準優勝を果たすと、東海地区大会では加藤学園津田学園菰野を下して優勝を。春季大会を通じてチーム力は上がってきていた。県大会からのチームの仕上がり具合などを見て、夏の選手権大会では優勝候補筆頭に挙げる声もあった。

 しかし一方では、「最近の中京は、運もついとらんし、夏の大会で弱いでいかんわぁ」という辛辣な声があったのも確かだ。

 というのも、2022年の夏の大会では3回戦で知多地区の公立校・東浦にコールドゲームで敗れているからだ。こうした一つの敗戦で「まぁ、中京は終わっとる」などと無責任な声も挙がってくるのも名門校ならではではあるのだが……。

 実際、不運はあった。2020年の新型コロナウイルスの感染拡大による春のセンバツと夏の選手権大会中止は、中京大中京としても、あまりにも残念なことでもあった。この年、県高野連開催の独自大会となった夏季選手権大会では高橋 宏斗投手(中日)と印出 太一捕手(早稲田大)のバッテリーで優勝しているのだ。また、その夏に甲子園球場で中止となったセンバツ代表校を招待して行われた交流試合でも智辯学園を延長の末に下して勝利している。

 実は、このチームは前年の秋季東海地区大会でも優勝し、地区大会優勝校が集う明治神宮大会出場でも決勝で健大高崎を下して優勝している。

 当然センバツでも優勝候補に挙げられていた。中京大中京の歴史の中でも、ここ10年で最も充実したチームだと言われていた。実質、この年のチームは公式戦負け知らずのまま、活動を終えたのだった。

 冗談半分に高橋監督は語っていた。

「あの年だけで、春夏合わせて甲子園の勝利数は5~6勝くらい損しているんじゃないの?」

 2020年秋にも畔柳 亨丞投手(日本ハム)を擁して秋季県大会を制し、東海地区大会でも2年連続で県立岐阜商を下して優勝。センバツ出場を果たして、甲子園ではベスト4まで進出している。「甲子園に出場したら簡単には負けない中京」という伝統もしっかりと示してはいる。

 しかし、2021年の夏は準決勝で愛工大名電に敗れると、秋も4強にも残ることができなかった。そして、2022年夏の大会で上述の通り3回戦で敗退すると、周囲からは「低迷している」というイメージが強くなってしまうのだ。

「夏は内容よりも負けないことが大切」

1 2