<秋季近畿地区高等学校野球大会:天理 5-1 和歌山東>21日◇1回戦◇ほっともっとフィールド神戸

 天理(奈良1位)が和歌山東(和歌山2位)に快勝。3年ぶりのセンバツ出場に一歩前進した。

 今年から天理を率いているのが藤原 忠理監督。昨年までは天理大の監督として阪神大学リーグ6連覇の実績があり、教え子には森浦 大輔(広島)や友杉 篤輝(ロッテ)などがいる。

 伝統の強打に加え、藤原監督のカラーである守り勝つ野球をミックスさせた野球で奈良の頂点に立った天理。さらにこの試合では足を使った攻撃が光った。

「ノックの時に硬さが見えた。初戦だからでしょうかね。この方が良いんじゃないかという思いから動いてみました」(藤原監督)と序盤から仕掛ける。

 和歌山東のエース・西岡 悠斗(2年)は低めを丁寧に突く投手。「しっかりと投球の軌道を見ておきなさい」と藤原監督はワンバウンドになるようなボールがあれば、走者は次の塁を狙うように指示を出していた。

 それを実行したのが7番投手の下坊 大陸(2年)。2回表二死一塁から変化球がワンバウンドになったのを見て一塁走者の下坊がスタートを切り、盗塁を成功させる。

 その後、二死一、二塁となり、ワンバウンドのボールを捕手が弾いたのを見逃さず、走者がそれぞれ進塁。さらに二、三塁から相手の暴投で三塁走者の下坊だけでなく、二塁走者の髙瀬 陽斗(1年)も生還した。

「相手のピッチャーが変化球のショートバウンドが多いと事前に頭に入っていたので、そこを意識できたと思います」と話した下坊。相手の特徴を利用した見事な攻撃だった。

 5回表には二死からプロ注目の遊撃手である1番・赤埴 幸輝(2年)が三塁側にセーフティバントを決めて出塁。「天然芝でなかなかボールが転がらないと聞いていたので、それが有効かなと思ってセーフティバントをしてみました」と赤埴は言う。

 藤原監督は天理大の監督時代にほっともっとフィールド神戸で何度も試合をしており、その時の経験が活きた形となった。

 続く2番・永末 峻也(2年)の打席ではランエンドヒットを敢行。永末の左前安打に相手守備のミスが絡み、赤埴が一気に生還して貴重な追加点を奪った。

「打の天理を大事にしながら戦術、戦略を新たに加えていく。その辺が上手くマッチングしてくれたらと思っています」と理想の野球について語る藤原監督。この試合はそれが上手く実戦できていた印象だ。

 守りでは先発の下坊が8回3分の2を投げて、3安打2四死球4奪三振で1失点の好投。球場のスピードガンではこれまでの自己最速を1キロ更新する141キロを計測した。

「チェンジアップやカーブが相手に有効だったので、そこでしっかりカウントを取れたのが良かったと思います」と変化球も冴え、終始危なげない投球だった。

 準々決勝では1回戦で履正社(大阪1位)を下した滋賀短大付(滋賀2位)と対戦する。「ロースコアの展開に持っていくのが上手く確立されている。相手のペースにハマらず、もう一回ミーティングを重ねて、しっかりと臨んでいきたいと思います」と気を引き締めた藤原監督。次戦で勝利すれば、センバツ出場は濃厚となる。