「強く振れば木製バットは折れない」
練習で木製バットを使う選手はよくいるが、公式戦で使うには勇気がいる。高校日本代表の一次合宿では木製バットで快音を響かせていた選手たちも「折れる心配がありますし、公式戦ではちょっと…」という声があがっていた。
「最初の練習試合では『試してみようかな』な程度の気持ちでした。よく言われる“折れる怖さ”はあったんですけど、強く振っていけば大丈夫です。木製バットは新基準バットより軽いバットが使えるのも大きかったです。新基準バットは900グラムという規定があるんですけど、木製バットは800グラムと軽いものも使えるので、それが大きかったです」
そんな木製バットでアーチを量産する宇野の打撃フォームは、重心が低いのが特徴だ。そして捕手寄りに立っている。
「捕手寄りに立つのは、ボールを長く見て、手元まで呼び込んで変化球を打つためです。打撃フォームについては 頭をぶらさないようにして、軸で振り切ることを教わったので、それが自分の感覚を混ぜていき、今の形になりました。
股関節に体重を乗せて、下半身をどっしりした感じで、いつでも振れる準備をする。それでボールを捉えることができれば、木製バットでも飛ばすことができます。投手のタイプによって早く振り出したり、タイミングを遅らせたりしています」
50m6秒1!清宮にはないスピードと走塁技術
早稲田実・和泉実監督
ここで改めて和泉監督に、宇野の評価を聞いてみよう。
「宇野は打ち出したら止まらない爆発力があります。入学後の練習試合で、いきなりバックスクリーンへの本塁打を運んだんです。清宮、野村と比べると……清宮のほうが芯にあたったときはもっと飛ばしていました。コンタクト力に関しては野村が上です。宇野は結構、穴が多いタイプだと思います。しかし、昨秋の都大会で関東一の坂井(遼)くんから140キロ超えの直球を本塁打にしたり、春に3試合連続本塁打を放ったり、『ここで打てば目立つ』という場面で結果を残せる点は魅力だと思います」
また宇野は50メートル6秒1の俊足。スピードと走塁技術の高さは清宮、野村にはない武器だ。
「直線距離でいったら宇野より速い選手はいます。ただ彼の走塁の上手さはベース周りの走塁ですね。彼はどの選手よりも小さく回れて失速しない。ターンの仕方が非常に上手いんです。入学時からできていたことで、少年野球のころからの積み重ねでしょう。
足が速い選手は大回りしてロスしてしまう事が多いんです。彼はそれがないので、ランナー二塁からのワンヒットで生還できる確率が高い。だから1番を任せているというのもあります。スカウトの方々は打撃力がどうかというところがチェックポイントかもしれませんが、この走塁技術もフォーカスされてほしいと思っています」(和泉監督)