<秋季東京都高校野球大会第16ブロックB:安田学園4-1都立城東>15日◇1回戦◇日大二高立川グラウンド
ともに下町の強豪で、互いに私立に行くなら安田学園、都立に行くなら城東という生徒が多いという。そして都立城東の内田稔監督も安田学園の會田勇気監督も明大の出身。明大にはスポーツ専門課程はないため保健体育の教員資格は取得できないので、城東の内田監督は順天堂大で学んで保健体育の教員資格を得たが、會田監督は内田監督からそのやり方を教わり、同じように順天堂大で学んだ。このように縁があり過ぎる両校の対決になった。
両チームとも3年生が抜けてメンバーが大幅に入れ替わった。都立城東はポジションと背番号が一致しない選手が多く、まだやり繰りに苦労している感じだ。一方安田学園は、メンバーが入れ替わった中でも、エースと4番打者が残っているのは大きい。
安田学園は夏を経験している左腕のエース・稲葉颯来(2年)が先発した。稲葉はこの夏、都立紅葉川戦で7回まで無失点に抑えながら、8回に4点、9回に1点を入れられ逆転サヨナラ負けをした。「後半崩れないよう、意識して練習をしてきました」と稲葉は言う。同じ都立の強豪である城東は、その成果を示す絶好の機会であった。
稲葉は、最速は130キロほどだが、チェンジアップやカーブなどで緩急をつけることで、130キロのストレートをより速くみせた。4回までは1人の走者も出さず、球数も43とテンポがよく安定した投球を繰り広げる。5回表に都立城東の4番・藤城宙(2年)に中前安打を打たれたが、後続はしっかり抑えた。なお藤城はこの試合3安打。4番打者だけあり、藤城だけはしっかりボールを捉えていた。
安田学園は2回裏に稲葉自らの中前適時打で1点を先制すると、4回裏は夏を経験している主将で4番打者の増田光太朗(2年)の死球からチャンスを広げ、3本の安打に捕逸なども重なり、3点を追加して試合を有利に進める。
都立城東は6回表に右前安打の9番・洲河泰成(2年)が、ワイルドピッチや敵失で生還し1点を返した。そして安田学園の稲葉にとっては「魔の8回」に一死後、9番・洲河にこの試合初めての四球を与える。夏の悪い記憶を思い出しそうな場面であったが、稲葉は落ち着いていた。1番・岡部怜史(2年)を二ゴロの併殺に打ち取り事なきを得た。
結局稲葉は、被安打5,与四死球1,奪三振7,失点1という安定した投球で新チームになって最初の公式戦に勝利した。稲葉はこの試合の投球を80点と評価した。減点の20点は、「いらないところでカウントを悪くしてしまいました」と語る。8回の四球などはやはり、反省材料だ。
それでも會田監督は、「夏は初戦で敗れ、そのリベンジのため、夏休み中一生懸命やってきました」と語る。夏崩れた終盤で、しっかり切り替えることができたのは、やはり夏の練習の成果だ。けれども目指すはさらに上にある。安田学園は就任1年目で現在セ・リーグの首位をキープしている巨人の阿部慎之助監督の母校だ。安田学園は勝ち進んでこそ、巨人の相乗効果が生まれる。けれどもその前に「一つ一つ積み重ねることです」と會田監督は言って、気を引き締めた。