<秋季東京都高校野球大会:二松学舎大付8-1日大三(7回コールド)>26日◇準々決勝◇スリーボンドスタジアム八王子
二松学舎大付は、3回戦は大勝したものの、1回戦、2回戦と初回に先制され、苦しい展開になっていた。それだけに、先発投手の出来が重要になってくる。強豪・日大三との対戦に先発で起用されたのは、これまで2番・右翼手で出場していた背番号9の甲斐 虎茉輝(2年)だ。身長164センチと小柄な左腕で、公式戦初登板になる。「練習試合でいいピッチングをしていたので、大会前から勝ち進めば起用することを決めていました」と、市原 勝人監督は言う。もっとも甲斐本人が先発を知らされたのは、試合前のアップを終えた時だった。「公式戦は初めてなので、緊張しました」と、甲斐は言う。
1回裏日大三の攻撃で、四球と味方の失策で2人の走者を出したものの、得点は許さない。最速は131キロということだが、ストレートはほとんど120キロ台。その一方で、変化球は100キロ以下になる。「ピッチャーは球が速いだけではない」と市原監督。球のキレや緩急でつける投球こそ、甲斐の持ち味だ。
甲斐が序盤2回を無失点に抑える。3回表二松学舎大付は二塁打の8番・大橋 零外野手(2年)を三塁に送り、2番打者でもある甲斐の詰まった当たりの一ゴロが内野安打となり、二松学舎大付が1点を先制する。二松学舎大付は、5回表は押し出しで1点を追加する。
甲斐は走者を出しても慌てず、落ち着いた投球をする。「ピンチになっても、バタバタしないで、0点に抑えるのでなく、最少失点に抑える投球をする」と市原監督は評価する。もっとも甲斐は、「ピンチの時は怖かったです。でもみんなが声をかけてくれて、自分のピッチングができました」と語る。
甲斐は6回裏に四球で出した走者を、日大三の7番・安部 翔夢内野手(2年)の適時打で還され1点を失った。
しかし日大三は先発の山口 凌我(2年)から近藤 優樹(2年)とつないだが、この大会好投していた近藤が7回表につかまった。二松学舎大学付が3点を追加してなお満塁の場面で1番・入山 唯斗(2年)が走者一掃の二塁打を放ち、この回6点。8-1と7点差になった。
甲斐は7回裏に安打1本を打たれたものの無失点に抑え、7回コールドが成立した。7回コールドとはいえ、甲斐はこの大会、チームで初めて完投した。甲斐は相手を封じ込めるような投手ではない。実際、この試合では奪三振が0だ。それでも被安打5の失点1。「彼らしい投球でした」と市原監督。甲斐の好投は、及川 翔伍(2年)、河内 紬(2年)という、これまで投げてきた投手にも、いい刺激になるに違いない。二松学舎大付は、大会の序盤はパッとしなかったが、徐々にエンジンがかかってきた。