<秋季東京都高校野球大会:帝京3-2共栄学園(10回タイブレーク)>26日◇準々決勝◇スリーボンドスタジアム八王子

 夏までの帝京は西崎 桔平内野手(3年)、奈良 飛雄馬内野手(3年)、富浜琉心(3年)ら、一発長打のある打者が揃う強力打線であった。ところがこの秋は、2回戦、3回戦と好投手と対戦したこともあり、打線はあまり目立たない。その代わり目を引くのが、投手を中心とした堅い守りだ。

 準々決勝の共栄学園にも首藤 健介(2年)という昨年の甲子園でもベンチ入りしている好投手がいる。試合後、帝京の金田 優哉監督が「タフな試合でした」と語るほど、厳しい試合になった。

 1回表共栄学園帝京の先発、岩本 勝磨(2年)の立ち上がりを攻め、3番・内池 緑内野手(2年)の適時二塁打などで、1点を先制する。岩本は外野手の好守で失点は免れたものの、2回戦も初回に打たれている。「課題は立ち上がりです」と語る岩本だが、1回表の失点で、「気持ちをしっかり持って、キャッチャー(飛川洸征)を信頼して投げました」と語り、2回以降は快調な投球をする。球速も球場のスピードガンが自己最速の143キロを表示するなど、回を追うごとに調子を上げてきた。

 しかしこの大会、1人で投げている共栄学園の首藤も好投しており、なかなか得点の糸口を見いだせない。けれども6回裏共栄学園の首藤が2つの四死球を出し、6番・加藤 連志内野手(1年)の右前適時打で帝京が1点を挙げて同点に追いつく。

 1-1の緊迫した試合は、9回表共栄学園が5番・糸井 勇斗(2年)の二塁打などで一死三塁のチャンスを作るが、7番・花田 蛍(2年)のスクイズ失敗などがあり、得点できない。試合は1-1のまま延長タイブレークを迎える。

 無死一、二塁から始まるタイブレークに際し、帝京の金田監督は、「バントはやらせろ。1点は仕方ない」と指示していた。

 その通り、10回表共栄学園の9番・首藤はきっちり送って一死二、三塁とする。今大会当たっている1番・川原 雅也外野手(2年)は四球で満塁。途中出場の2番・石井 優真外野手(2年)の一ゴロは内野安打になり、共栄学園が1点を勝ち越す。続く3番・内池の三塁線への強い打球を、帝京の三塁手・加藤が好捕し、しかも素早く二塁に送球し、さらに一塁に転送されて併殺になった。抜ければ長打コースであったが、好守の加藤は、「バッターの振りが強く、引っ張る傾向があったので、ライン寄りに守っていました」と語る。この大会の帝京は、勝負どころでの冷静な守備が際立っている。帝京の金田監督は、「普段からプレッシャーのかかる練習をしています」と語る。そうした練習の成果がここ一番で出ている。

 10回表を許容範囲の1点で切り抜けた帝京は、その裏、2番・酒井 大雅外野手(2年)の左前適時打で1点を挙げ同点に追いつく。さらに二死二、三塁から4番・立石 陽嵩外野手(1年)は二ゴロで1点止まりかと思われたが、一塁手が落球して帝京がサヨナラ勝ちした。

 帝京の金田監督は「我慢比べでした」と語る。夏までのような力強さはないけれども、普段の練習から選手にプレッシャーをかけて鍛えてきた成果が、重要なところで崩れない帝京を作っている。帝京は3回戦でこの夏の東東京大会で優勝した関東一を破り、準々決勝で昨年の東東京大会を制した共栄学園を破った。準決勝は、2年前、3年前の東東京大会を制した二松学舎大学付と対戦する。この一戦に勝てば、2011年の夏以来の甲子園もみえてくる。

 一方敗れた共栄学園だが、首藤投手を中心に健闘が光った秋の戦いであった。ただ来年の春や夏に向けては、首藤以外の投手の育成がカギになる。共栄学園の原田 健輔監督は、「この大会、1人しか投げていないことを、どう感じるかですね」と語る。首藤の力投が、ほかの投手にどう影響するかが重要である。