27日、明治神宮野球大会出場をかけた東北地区大学野球代表決定戦の決勝が行われ、富士大が仙台大を2対1で下して2年連続6度目の出場を決めた。

 この日は先発のエース左腕・佐藤 柳之介投手(4年=東陵・広島2位)が立ち上がりに苦しみ、初回から1点を先制される。一方の打線は仙台大先発・大城 海翔投手(1年=滋賀学園)を打ちあぐね、5回までパーフェクトピッチングを許した。

 嫌な流れを断ち切ったのは、24日のドラフト会議で巨人から育成1位指名を受けた坂本 達也捕手(4年=博多工)だった。この日は「8番・捕手」でスタメン出場。5回、2死一塁から自慢の強肩で盗塁を阻止すると、整備明けの6回には待望のチーム初安打を放って塁上で吠え、さらに盗塁を決めて味方ベンチを盛り上げた。

 チーム初安打は「嫌な雰囲気を変えるために狙っていた」という執念のバント安打。この回こそ得点にはつながらなかったものの、富士大打線が息を吹き返し逆転勝利するきっかけになった。

 ドラフト当日は支配下で指名されず、一時は「今回は(指名が)ないかな…」との思いが頭をよぎった。社会人チームの誘いを断り「プロ一本」の決意を固めていただけに、育成ドラフトで名前が呼ばれた瞬間は心から安堵した。

 博多工時代は投手と野手を兼任。当初は高校までで野球をやめ就職するつもりだったが、捕手としての才能に惚れ込んだ安田 慎太郎監督に熱心に誘われ富士大に進学した。

 大学では期待に応え2年春から正捕手の座を奪取。当時の絶対的エースだった金村 尚真投手(現・日本ハム)とバッテリーを組む中で、「試合の組み立て方」や投手と密にコミュニケーションを取ることの大切さを学んだという。

 以前の取材で「肩や打撃が良いのはもちろん、ピッチャーに信頼してもらえるキャッチャーが一番の理想」と話していた坂本。「自分の持ち味であるリード力をもっと伸ばしたい。(プロでも)コミュニケーションを大切にして投手からの信頼を得たい」と意欲十分だ。

 巨人を率いる阿部 慎之助監督は現役時代に捕手として史上3人目となるシーズン40発を記録するなど、球界屈指の捕手として名を馳せた。入団後には阿部監督に「配球やキャッチャーの技術などをイチから教えていただきたい」と目を輝かせる。

 阿部監督は「打てる捕手」でもあったが、坂本の打撃はまだまだ発展途上。大学でウェートトレーニングに力を入れたことで打球の強さや飛距離は向上したものの、本人は「打撃が一番の課題」と認識しており、さらなる成長を期す。

「少しでも早く支配下登録してもらえるように頑張りたい」。ドラフト指名はまだ通過点。まずは持ち前のリード力で富士大を日本一に導き、プロの世界へ飛び込む。