<秋季愛知県大会 準々決勝:至学館 2―1 中部大春日丘>◇2024年9月16日◇小牧市民球場

 愛知県の高校野球の勢力構図としては、伝統的にいわゆる‟名古屋市内私学4強”と呼ばれている中京大中京、東邦、愛工大名電、享栄が各校の目標とされている。

 それを追う勢力として‟セカンド私学”と言われているグループがある。この夏の愛知大会で言えばベスト4に進出した杜若に、享栄、愛工大名電を下した名古屋たちばな(前愛産大工)や誉、豊川などである。それらの位置づけに匹敵するのが、この日対戦した両校だ。

 至学館は2022年夏と2016年春に一度ずつの甲子園出場実績がある。中部大春日丘も近年は県大会ではベスト8~4にもしばしば顔を出す上位常連校となっている。昨夏もベスト4に進出している。今秋の県大会でも、初戦で千種に快勝すると2回戦では享栄を下し、3回戦では愛工大名電にタイブレークの末に勝利してのベスト8だ。また、至学館の鈴木健介監督と中部大春日丘の齊藤真監督のどちらも中京大の出身で先輩後輩の対決でもある。

 試合は5~6点をめぐる戦いになるかと予想していたが、試合はロースコアの競り合い、守りでの粘り合いになった。

 初回、中部大春日丘は二死から連打で一三塁とするも、尾﨑陽真投手(1年)は何とか踏ん張って0点に抑える。その裏、至学館は立ち上がりやや制球が乱れた中部大春日丘・水野拓海投手(2年)に対してじっくりと攻めて四死球で二死一二塁とする。ここで、5番に入っている尾﨑投手が中越三塁打を放って2人が相次いで生還。至学館がいい形で先制した。

2回、中部大春日丘もこの回先頭の福田優介選手(2年)が右中間へ三塁打。続く横田鉄伸選手(1年)が中前打で返してすぐさま1点差。これは、当初の予想通りのある程度の点の取り合いになっていくのだろうと思われる展開だった。ところが、さらに無死一塁という場面で、尾﨑投手は冷静に打たせて併殺とする。ここから、試合そのものも展開が変わっていった。

 以降は尾﨑投手と水野投手の投手戦と言うか、粘り合いが続く。どちらも走者を出しても踏ん張るという形で0が並んでいくようになった。

 6回途中、一死一二塁の場面で、中部大春日丘の齊藤真監督は、水野投手と横田中堅手を入れ替える。横田投手は、以降も1安打のみでしっかり投げ切った。しかし、尾﨑投手も最後まで自分のペースを崩さない粘りの投球。結果的には11安打を許したものの、失点は2回の1点のみに抑えて、初回の味方の2点を守り切った。

 至学館の先発メンバーはバッテリーを含めて5人が1年生という布陣だったが、よく守り切った。鈴木健介監督は、「今日は、サヨナラで勝つぞということで後攻を取ったのですが、初回の得点を守り切る粘り勝ちになりました。よく守れたということではないかともいます」と振り返っていた。

 尾﨑投手は2試合連続の完投となった。何度も練習しているという牽制球を含めて、相手に先の塁を極力与えない守りも、至学館らしいとも言える。チームは2年生が12人、1年生が31人。1年生が試合ごとに経験値を高めているのがわかる戦い方だった。

 11安打しながらも1点しか奪えず、1点差で敗れた中部大春日丘の齊藤監督。「勝ち負けは、時の運もありますし仕方ないです。だけど、この秋は手ごたえもありました。それだけに悔しいですね。ただ、選手を責めるわけにはいきません。打線も、コツコツとやってきたことは実になってきていているとは思います。勝てなかったのは、監督の責任かなぁとも思います」と、反省の弁を述べた。それでも、これから一冬越えて来春以降へ向けて、大いに伸びしろを感じさせてくれるような戦いぶりではあった。