<秋季関東地区高校野球大会:横浜 2-0 東農大二>◇28日◇準々決勝◇サーティーフォー保土ヶ谷球場

 横浜のスーパー1年生・織田 翔希投手の進化が止まらない。福岡の足立中時代から140キロ台の直球を投げる投手として注目を浴びた織田は、横浜入学後の春季県大会からベンチ入りし、慶応戦では伸びのある直球で三振を奪う好リリーフを見せるなど、華々しいデビューを飾った。

 夏の大会では登板機会も増えて、ストレートの球速も140キロ台前半から140キロ台後半まで順調に球速アップ。そして秋季大会では、先発、リリーフをこなし、4回戦以降では15回を投げ、16奪三振、自責点1の快投を見せていた。

 ただ課題はスタミナ。準々決勝の武相戦では7回途中まで投げて、1失点でマウンドを降り、決勝の東海大相模戦でも7回途中でマウンドを降りて、2失点だった。どの試合でも140キロ台後半の速球は出ているが、終盤での球速が落ちるだけではなく、コントロールも甘くなってしまい、失点して、イニング途中で降板していた。

 県大会が終わってからの2週間は、関東大会でのスタミナ強化のため、短ダッシュの練習、投球練習で投げる球数を増やしてきた。準々決勝での先発を告げられたのは関東大会の組み合わせが決まってから。この日へ向けて、逆算をしながら、調整を続けてきた。

 立ち上がりから全開の投球を見せ、初回から最速146キロを計測。2回には最速148キロと、どのイニングでも140キロ台を当たり前に出していた。5回まで37球中、32球が140キロ超えで、平均球速142.8キロと、文句なしのストレートだった。ボールを受ける駒橋 優樹捕手(2年)は織田のストレートについて「とにかくきれいなんです。伸びるというより、きれいな球筋でコントロールよく決まります」と語る。また120キロ近いチェンジアップも打者の手元で落ちてテンポよく打者を打ち取っていた。

 そして山場の6回を迎える。二死一、二塁のピンチを招くが、二ゴロに打ち取って、見事に切り抜ける。7回以降も140キロ台の直球を投げ続け、2安打完封勝利。これが公式戦初完封となった。球数は105球とテンポの良いペースだった。織田は「6回を乗り越えたのは自分としても嬉しかった」と語るように、コントロールが最後まで衰えずに、投げられたのは大きな成長点だった。

 リードする駒橋 優樹捕手は成長ぶりを評価する。

「終盤の球速は序盤に比べて落ちていますが、コントロールの乱れはなかったので、最後まで落ち着いて投げる事ができていたと思います。織田はとにかくマウンド上では強気。その性格を考えたリードをしています」

 この試合の平均球速は141.69キロ。わずか1年で140キロ台後半の速球を投げられ、先発完投もできる速球投手に育った。村田浩明監督はここまでの成長は想像以上だという。

「軟式出身で、体も細かったので、デビューはもっと遅いと思っていました。ただ、織田が凄いのは吸収力。指導したことをスポンジのように吸収する。だから成長スピードが速い。野球がとても好きなんでしょうね」

 その織田だが、ある意味、横浜らしくない本格派右腕だ。横浜の投手といえば、軸足にしっかりと体重を乗せて、体を沈み込ませて投げる投手が多い。ともに中日で活躍する涌井 秀章投手、柳 裕也投手もそのタイプだった。織田は重心が高く、マウンドの傾斜をうまく使って、振り下ろすフォーム。185センチ71キロと長身を活かす上では、とても合理的で、織田のようなフォームの大型右腕は多い。横浜首脳陣も織田の持ち味を最大限に引き出すことができているからこそ、最高のパフォーマンスを出せていると考えられる。

 ドラフト観点でいえば、来年のドラフト候補と混じっても、遜色ない。2年後のドラフトでは世代NO.1の投手として注目されるのではないか。これで来春のセンバツが当確になった。まだこれからも凄みのあるパフォーマンスを見せてくれそうだ。