<秋季関東地区高校野球大会:健大高崎 10-3 佐野日大(7回コールド)>◇29日◇準々決勝◇等々力球場
健大高崎の剛腕・石垣 元気投手が関東大会準々決勝・佐野日大戦で今大会初登板となった。試合前のブルペンでは調子が良かったと語る石垣。立ち上がりから全開の投球を見せる。初回の最速は156キロ。これまで最速は154キロだったので、2キロ更新したことになるが、この球以外でも150キロ中盤のストレートを計測しており、あまりにも球速が出すぎているのが気になり、編集部のスピードガンでも測定することにした。
等々力球場のスピードガンは、ネット裏で測定するスカウトたちのスピードガンよりも数キロ増しているといわれており、実際に測定してみると、3キロ〜10キロの違いがあった。例えば、145キロが155キロと出たり、少し抜けた力のない130キロ後半のストレートが150キロと出ている。これだと投手の正確なスピードは分かりにくいといえる。
石垣自身、球速が出やすい球場だと理解をしていた。
「初戦も等々力球場だったのですが、仲間の球速がいつもより出ていて、これは出やすい球場だなと思っていました」
2回には最速158キロが出て球場がどよめいたが、「そんな出ていないです」と苦笑いだった。球場では測定した直球52球中、26球が150キロ以上で、平均球速149.55キロだった。編集部のスピードガンでは常時138キロ〜147キロで、最速が152キロ。150キロを超えたのは5球あり、平均球速144.21キロだった。
高校生投手が先発して、平均球速140キロ中盤は異例で、今まで測定してきた中で、1試合で150キロを5球以上出した高校生は佐々木 朗希投手(ロッテ)と西 純矢投手(阪神)の2人のみ。編集部のスピードガンは結構出にくいほうなので、やはり球速は別格だった。
球質に関しても、ネット裏から見ていても伸び上がるようなストレートは凄まじいものがあった。石垣の良さを発揮したのは終盤だった。序盤は「マウンドが硬くて、最初はなかなか合わず、力んでしまった」と語るように、150キロ台は出ていても振り抜かれていた。そこから130キロ台のスライダー、110キロ台のカーブの割合を増やしながら、組み立てていた。対戦した佐野日大の打者は「重さを感じました。合わせることはできますが、威力があって飛びにくいです」と評した。
結果として7回、6奪三振、3四球、3失点の完投勝利だった。チームは3年連続のセンバツに前進したが、青柳博文監督は「今日はコントロールが良くなかった。打線がよく打ったから勝てた試合でした。大事な試合で四球を出して、走者をためて一気に3点取られるのは内容として良くない」と厳しい評価だったが、石垣の凄さと課題が見えた試合だった。
現状の課題は変化球と直球のバランス。変化球はスライダーの精度はより高まっていて、カーブを有効的に使うようになったが、ばらつきがある。まだ絶対的な変化球がない。ストレートは1イニングの中でコントロール、伸びにブレがあり、相手から振り抜かれやすいボールになっている時もある。石垣は178センチ75キロと投手として上背はそれほどなく、角度が使えない。そのためストレートの質をさらに追求し、変化球も縦変化で抑えられるようになるといよいよ攻略困難な投手になる。
石垣の持ち味である球速については、他の球場でどれだけの球速が出るかによって、夏からの進化ぶりが分かるのではないか。
来年のドラフトでは「ドラフト1位でプロにいきたい」と語った石垣。それが目指せる投手であり、今の高校生投手では一歩リードしているだろう。さらに勝ち進んで、怪物ぶりを見せることができるか注目だ。