<秋季東京都高校野球大会第14ブロックA 代表決定戦:佼成学園 8-1 都立葛飾野(7回コールド)>◇2024年9月16日◇佼成学園グラウンド

 佼成学園にとって都立葛飾野は、1957年の夏、創部して最初の公式戦の対戦相手(その時は5-1で葛飾野が勝利)という因縁がある。しかし今回は8-1の7回コールドで、佼成学園が大勝した。けれども佼成学園の藤田直毅監督は、「食らいついてこられて、危なかったですね」と語った。実際、途中までは、どうなるか分からない、厳しい試合であった。

 佼成学園は1回表に2番・狩塚光陽二塁手(2年)の中前安打に、3番・元山航太遊撃手(2年)の二塁打で先制すると、3回表は1番・市川烈外野手(2年)が四球と二盗、ワイルドピッチで三塁に進み、元山の中前安打で1点を追加。続く元山の2打席連続の二塁打で無死二、三塁とする。ここで葛飾野は先発投手で主将の佐藤朝陽(2年)と一塁手の津上優人(2年)を入れ替え、津上がマウンドに上がった。津上はこの夏も登板しているが、津上が登板するタイミングが早かったことが、葛飾野としては、結果として痛かった。津上は、佼成学園の4番・中村慈胤一塁手(1年)の中犠飛で1点を失ったものの、その後は好投し、追加点を許さない。

 佼成学園には昨年の秋から主戦投手として活躍している熊谷憲祐(2年)という左腕の好投手がいるが、疲労がたまっていることもあり、夏の大会の後は、1年生の前田将弥が投げており、この試合でも先発した。

 前田の好投で佼成学園は3点リードして試合が進む。その一方で葛飾野の津上は走者を出すものの、力のある球で追加点を許さず、試合は緊張感のある展開になる。5回表に佼成学園は、三塁手を背番号15の前田侑哉(2年)から、背番号5の間野結斗(2年)に交代した。間野は昨年の秋に3番打者で出場していたが、「打つ方は自信をなくしていました。でも守備は抜群にうまいです」と藤田監督。打者としてよりも、守備固め的な交代であった。

 6回表葛飾野は、2番に入っている津上が四球で出塁すると、盗塁で二塁に進み、4番の大桃司外野手(2年)の中前安打で還り2点差に迫る。この時点で佼成学園の藤田監督は、8回か9回にはエースの熊谷を投入することを考え、ブルペンで投球練習を始めていた。

 このような状況で迎えた7回裏、佼成学園は無死一、二塁の場面で、5回から守備固めで入っていた間野が打席に入る。間野は2ボール2ストライクからの5球目を叩き、これがレフト柵越えの3ランになった。「打ったのは、内よりの真っ直ぐです。追い込まれていたので食らいつきました」と間野は言う。間野の本塁打は練習試合を含めて6本目だが、公式戦は2本目だ。間野は昨年の秋の1次予選の代表決定戦でも試合の流れを決定づける3ランを放っている。公式戦での本塁打は、その時以来だ。「今まで打てなくて自信をなくしていましたが、自信になりました」と間野は言う。藤田監督は「あのホームランはでかいです」と言うほど、決定的な一発だった。

 一方葛飾野の才野秀樹監督は、「津上のスタミナがなくなり、ボールが来なくなっていました」と語る。葛飾野とすれば、先発の佐藤が中盤まで投げて、津上につなぐ展開にしたかったが、3回での交代になったことが誤算だった。

 間野に打たれたところで津野は交代。佼成学園は葛飾野の3番手・小池正宗(2年)を打ち込み、この回一挙に5点を入れて8-1。7回コールドが成立した。

 最後はコールド負けとなったが、葛飾野の健闘が光る一戦だった。3回途中で降板し、一塁手になっていた主将の佐藤だが、才野監督は、「ものすごいキャプテンシーです。指導者が言おうと思っていたことを、先に言ってくれます」と評価する。実力があるチームだけに、佐藤主将を中心にチームがどう成長していくか、楽しみである。

 勝った佼成学園は、二塁手・狩塚、この試合で3ランを放った三塁手の間野、主将で遊撃手の元山と経験豊富な選手が並び、一塁手の中村は1年生ながら、藤田監督は攻守で実力を評価する。投手も熊谷に加え、1年生の前田もしっかり試合を作れる。都大会でも戦える戦力はしっかり整いつつある。