ヤクルトから4位指名を受けた田中 陽翔内野手(健大高崎)。大学進学が決まっていた中、9月に急転直下で、高卒プロ志望に切り替えた。元プロの父の反対もある中、見事に本指名を勝ち取った。今年は本指名69名、高校生内野手はわずか7人だった。それだけ指名のハードルが高くなっている中、田中の良さは何か考えていきたい。

 まず打撃はかなり力強く、本塁打を打てる内野手になれそうな予感がする。スクエアスタンスで構える姿は雰囲気があり、トップを形成してから、インパクトに入るまでロスのないスイングができており、的確にボールを捉えることができている。正確なスイング軌道で、さらにフォロースルーも豪快。遠くへ飛ばすことができる。

 140キロ後半の速球投手に対しても振り遅れしないのも魅力で、清水 大暉投手(前橋商)の147キロのストレートを振り抜いて、ライトスタンドへ運ぶことができた。本人は速球に強いと語るように、ある程度のスピードにもついていける。また変化球にもセンター方向にも打ち返すことができる。夏の大会での13安打は石塚 裕惺内野手(花咲徳栄)に並ぶ記録だ。夏の打撃内容も成績面も文句なしで、しっかりとプロから評価されたといえる。

関東大会で豪快な本塁打を打つ田中陽翔

 守備は一歩目を意識していると語り、動きはかなりスピーディで、ショートの守備は巨人1位となった石塚よりも速く、肩も強い。徹底的に基礎を固めればプロでもショートができる潜在能力の高さはある。

 フィジカル強化の意識も高く、高校野球引退後は毎日ウエイトトレーニングを行い、トレーナーとも相談しながら、どんなトレーニングをすればいいか、考えながらやっていた。田中の場合、ベンチプレスでも100キロ以上を持ち上げるのではなく、自分が持ち上げられる90キロぐらいの重量で繰り返し、持ち上げるトレーニングをしていた。

 その結果、ドラフト前に見た打撃練習はかなり力強いものがあった。

 ヤクルトは高卒5年目の長岡 秀樹内野手(八千代松蔭)がいる。今季、長岡はリーグ最多となる163安打を放ったが、長岡の高校時代と比較しても打撃技術は上であり、順調にいけば、10本塁打前後は期待できる打者になれる可能性はある。

 夏の活躍は同世代の遊撃手の中でも群を抜いていたものがあり、正当に評価された。ヤクルトは強打の内野手に育て上げることができるか注目したい。

田中 陽翔(たなか・はると)
183センチ83キロ 右投げ左打ち。父はロッテ、ヤクルトで大型左腕として活躍した充氏。
東京都狛江市出身、東練馬シニア時代から大型遊撃手として活躍。健大高崎では1年春からベンチ入りし、関東大会に出場。3年春の選抜では20打数7安打の活躍で、学校初のセンバツ優勝に貢献した。3年春の関東大会では7打数6安打の活躍。3年夏は群馬大会、甲子園合わせて13安打を記録した。高校通算22本塁打。

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