甲府一・野球部訪問①:偏差値60超の進学校!山梨県の公立進学校が甲子園を目指して「狙いや目的といった内発的な動機付けをもって練習をやる」
甲府一・野球部訪問②:OBは明治までさかのぼる!?144年の歴史を持つ山梨の超伝統校が挑む大きな壁
自信、勇気、覚悟を持てる選手に
20年ぶりとなる8強入りという快進撃を見せた甲府一。投打の柱だった3年・仙洞田豪投手の奮闘もあって、久々の上位進出になったが、県内では進学校としての一面が強い。
偏差値60以上を誇り、学校には普通科に加えて探求科が存在する。海外研修が組まれるなど勉強に注力したコースで、卒業生は東京大といった国立大、慶応義塾大などの私立大へ進んでいるという。
だから野球部の中でも塾に通いながら練習を重ねている選手もいるそうで、指揮官の保坂典秀監督も「発言だったり、こちらからの投げかけに対する理解だったりは凄いと思います」と目を細めながら、選手たちの練習模様を見守る。
練習メニューに対しても、「指導者とキャプテンの意見が一致するのも、彼らの賢い部分だと思います」と話す。練習中についても、的確な指示出しやアドバイスを出すなど進学校としての一面が垣間見える部分だという。
主将・田中蒼空内野手も「言われたことを吸収するのは早いので、やっぱりみんな頭がいい」と話す。選手間でも進学校としての一面が見える甲府一は、選手主体で練習メニューを決める。普段はおよそ2時間の練習の中で、「先輩たちに追いつくには練習量をこなさないといけない」と田中主将は旧チームの練習方法も参考にしながら、とにかく体を動かして、無駄な時間を減らして数をこなせる練習を意識している。
だから試合でも選手たちにゆだねるシーンが時折あるというが、「アクションに対して納得いかないことがある」と、保坂監督は物足りないことがあるそうだ。
「ある試合で、4点リードの場面でピンチの場面があったんです。点差もあったので、通常の守備位置でも良かったんですけど、彼らは前進守備を選択した。その選択は良いんですけど、0点で抑えてやろうっていう気迫が見えなかったんです。
結果、ヒットを打たれて失点したんですけど、自分たちの選んだ行動に対する決意が足りない。そこは選手主体でやる難しさですけど、自主的に考える野球はこれから必要なので、これからもやっていきたい部分ですけどね」
保坂監督が話すような選ぶ勇気、捨てる覚悟といった精神力。その重要性を強く感じているようだった。
「自信とか勇気とか、覚悟とかを持つ人ってカッコいいですし、高校野球という勝負の世界にいる以上、それを身に付けずに社会へ行くのはもったいないと思うんです。だって、社会に出て無難な選択をしてミスをしなくても、大きな成果はないですし、とっさの対応力は磨かれないと思います。
そういう部分は選手たちは苦手かなって感じるので、狙いや目的といった内発的な動機付けをもって練習をやる。そこをしっかりと指導者が突き詰めて、選手たちに練習をしてもらう。それが大事だと思うので、話すようにしています」
田中主将も「主体的にやっているからやる気が出て、自分のみになりますが、ちゃんとやらないと、やらされている練習になって、良い練習にはならないので、難しい」と話しており、保坂監督と同意見。
ただ闇雲に選手主体でやるのではなく、考えをもって練習をする。進学校として普段からフル活用している頭をグラウンドでも生かしているから、甲府一は成立しているのだろう。