2024年夏、地方大会では数多くのドラマが起きた。印象的なゲームはいくつかあるだろうが、栃木大会は劇的な展開になった1つだろう。
春の関東大会王者・白鴎大足利が初戦敗退。名門・作新学院も準決勝で敗れた。他にも文星芸大付、国学院栃木といった私学勢が敗れ去った。
結果、甲子園に勝ち進んだのは公立校・石橋。エース・入江祥太投手(3年)らの活躍で優勝。甲子園でも白星を挙げた。オレンジ一色に染めたアルプススタンドを含めて、全国でも石橋の名前は轟いた。
宇都宮商・野球部訪問①:「正直、ヤバかった」...102年ぶりの夏の甲子園へ、栃木の伝統公立校が令和で目指す野球 「手を抜くことなく、一生懸命にやること」
宇都宮商・野球部訪問②:初の栃木代表校というプレッシャーは「仕方ない」 覚悟を決めた宇都宮商の指揮官・選手たちが見出した突破口
ライバルの戦いぶりから見出したヒント
「正直、ヤバかったです。見たくなかったですね」
苦笑いを浮かべながら石橋との一戦を振り返ったのは、宇都宮商のエース・藤本琉衣投手(2年)。この夏、準々決勝で対戦して敗れたが、春は県大会で準優勝をおさめた。県内でも有数の実力ある公立校である。
秋は残念ながら国学院栃木に3回戦で敗れた。少し早いオフシーズンを過ごしているチームに取材に行くと、指揮官・山口晃弘監督は石橋の見せた戦いぶりに、何かヒントを得ているようだった。
「新基準バットが今年から導入されたわけですけど、石橋はセンター返しを意識したバッティングで、得点を重ねました。まさにああいった形で点数を取るのが、うちの野球です。だから、新基準バットの導入で起死回生のチャンスが増えたと思うので、選手たちにはよく話しています。
と同時に、取れるチャンスをしっかり生かす。状況に応じたバッティングで継ぐ野球、スモールベースボールを意識することが大切だと思うんですけど、最終的には『こうなったらいいな』という展開、流れも強いチームには必要だと思いました。解説で栃木大会の決勝を観戦している中で、思い描いたような試合展開を繰り広げた。勝つっていうのは、女神がほほ笑むだなって思いました」
だから試合の中でも、些細な結果に対して「流れがある、ツいているぞ」と選手とともに理解しながら、戦うことが増えたという。では、そういった流れ、チャンスをつかむために、山口監督は何をポイントだと考えているのか。
「何事にも手を抜くことなく、一生懸命にやることだと思うんです。そういった選手は神様が見放さないはずなので、何気なくグラウンド周りの掃除をする際、『アイツさぼっているな』とか姿をみています」
主将である末永大稀内野手(2年)に話を聞いても、「普段の学校生活でもゴミがあれば拾うようにしていますし、インフィールドだけではなく、後ろの環境も大切にしよう」とのこと。同時に、「劣勢から逆転勝ちできたり、勝負所で結果を出して勝ち切ったり出来た時には、普段のゴミ拾いのおかげだと思います」と末永主将のなかでは実感している部分があるようだ。