大阪の高校野球といえば、真っ先に思い浮かぶのは大阪桐蔭履正社の2校だろう。他にも秋季近畿大会に出場した大阪学院大など、大阪は上位に私学勢が名を連ねる。全国でも有数の激戦区である。

もちろん、汎愛八尾を筆頭に実力のある公立校もいる。が、大阪の公立校が甲子園に出場したのは、1990年に渋谷が出場したのが最後になっている。それだけ厳しい道のりだが、その背中を追いかけている学校の1つが、堺西である。

堺西・野球部訪問①:「もう無理やな」から一転!仙台育英、大阪桐蔭らを下して日本一となった元甲子園球児が大阪の公立校で目指す野球
堺西・野球部訪問②:たった1年半で球速20キロアップ!香川の私立→大阪の公立へやってきた凄腕コーチが授けるメソッド

激戦区・大阪を勝ち抜くカギは「ノーヒットでも点を奪う」

堺西は2018年の南大阪大会でベスト16に進出するなど、現状では中堅校といったところ。夢舞台に行くには、強豪私学の壁を越えていかないといけない。実際、過去5年の夏の大会の戦いを振り勝っても、全て私学勢の前に屈している状況が続いている。

この結果を受け入れたうえで、指揮官の樋口政宏監督は、走塁に突破口を見出している。

「強豪私学には140キロを超えるような投手が大勢います。ですから連打は厳しい。けど四球ならば1試合で1、2個くらい出るはずです。そのチャンスを生かして、ノーヒットでも点を奪う。そんな野球を目指したいと思っています。だから選手たちにはしっかりと理解させています」

取材日は平日の放課後練習だったにもかかわらず、最初は走塁練習。バッテリーを付けて、ワンバウンドになるのを判断して、塁上の走者がスタートを切る。さらに樋口監督自らが打席に立って、生きた打球を通じて打球判断を磨く走塁練習も行われた。

主将・阪本裕哉内野手(2年)は「守備の乱れで次の塁を狙うのは、普段からずっとやっている」と話し、チーム内での走塁意識は高い。とはいえ、かなり些細なところでも気になることがあれば、打席から樋口監督の指摘の声が飛んでいた。

これには樋口監督も「結構マニアックなところはあるんですけど」と苦笑いを見せる。それでも妥協することなく指導するのは、「甲子園で勝てた試合があったので、重視しています」と語る。

というのも樋口監督、母校・常葉菊川(現常葉大菊川)で2007年、センバツにて当時ベンチ入りメンバーの1人として全国制覇を達成。日本一を知るからこそ、「野球を楽しむ感覚が1番大事だ」と語るうえで、走塁を生かした戦略が大事だというのだ。

亡き恩師から学んだ野球観、そしてメッセージ

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