19日から大阪、兵庫で活動してきた三機サービス杯 第3回全日本大学準硬式野球東西対抗日本一決定戦 甲子園大会(以下、甲子園大会)。最終日は甲子園での試合のみとなった。

試合は初回、東日本選抜が先発・西村 祐人投手(中京大中京出身)が三者凡退に抑えてリズムに乗ると、西日本選抜・前村健斗投手(興国出身)の不安定な立ち上がりを突いて1点を先制。試合の主導権を握った。

その後は、両チームの投手陣が奮闘。1対0のまま7回まで進むと、東日本選抜が2死二塁から途中出場の菊池 開斗内野手(花巻東出身)、主将・久保嶋 真也内野手(桐蔭学園出身)の連続適時打で2点を追加。3対0と東日本選抜が一歩抜け出すと、最後は7番手・松下 未来投手(県岐阜商出身)が抑えて東日本選抜が歓喜の輪を作った。

この試合、両チームともに積極的に選手交代。多くの選手に出場機会を作るためだが、その代わりに出場時間は限られた。
野手であれば途中交代、代打起用など。投手も1回ごとに交代する細かな継投、西日本選抜に限ってはワンポイントでの起用もあった。夢舞台に立てた時間はわずかでも、選手たちは与えられた役割・立場に対して、責任と自覚をもって全うしていた。

まず役割を果たしたといえば、東日本選抜・佐藤 龍人(東邦出身)。4番抜擢に応える先制の適時打は十分な働きだった。

かと思えば、中盤では西日本選抜のリリーフ陣が甲子園の主役に躍り出た。
4番手・原田拓海(久留米商出身)はこの試合、5回に1死二塁のピンチを背負った。だが、「悪い形でピンチを作ったわけじゃない」と焦らない。普段であれば「失点したら負ける」くらいの危機感を持つはずが、今日のマウンドは「自分が中心になって試合を作る」と強気な姿勢。「抑えたら攻撃に流れが来る」と開き直って投げて、スコアボードに0を刻んだ。

6回、2死三塁のピンチでマウンドに上がった6番手・井上恭宏投手(姫路飾西出身)も、「投げ終わった時は、『俺が主役だ』って思うところがあった」と話す。

最後はスライダーで空振り三振を奪ったが、そのスライダーはオフシーズンに強化した球種。コーナーへの投げ分けとして、ツーシームとともに練習してきたという。

そのツーシームで追い込み、最後はスライダーで仕留めた。冬場の成果を発揮して、チームのピンチを救った。その経験に快感を覚え、井上は主役だと感じたのだろう。

その点でいえば、東日本選抜のクローザー・松下未来投手(県岐商出身)は、会場を巻き込んで、まさに甲子園で快感を味わった。
8回からマウンドに上がると、最速144キロ、常時140キロ近くを連発するストレートで西日本選抜を圧倒。球場内にいた観客からも「速い」と思わず声が漏れるほど。圧巻の投球には、「不思議な力が出た」と笑みをこぼした。

とはいえ今日の試合、「最初からヒーローになるつもりで準備してきた」とやる気満々でマウンドへ。自ら志願した胴上げ投手にもなれて「めちゃくちゃ気持ちよかった」とやり切った表情に満ちていた。

松下と同じ東日本選抜の主将だった久保嶋真也内野手(桐蔭学園出身)も「投手陣は、自分がゲームを決めるくらいの気持ちが強かったから、抑えられたと思います」と話す。

一方で西日本選抜の伊藤元翔主将(初芝橋本出身)は「学生委員の方が中心にいるからこその、自分たち選手というのが甲子園大会だと思う」と話し、主役は支えてくれた学生委員たちであると主張する。

プレー時間が短くても、その瞬間だけは主役となって堂々としているように見えた。準硬式は選手だけではなく、学生委員、マネージャーなどあらゆるポジションで活躍できる世界。どの役職、役割であっても、誰もが主役になれる。そんな準硬式らしさが、この甲子園大会では終始見られた。

もちろん試合以外のキャリアガイダンス、インテグリティ研修など3日間のどこを切り取っても、準硬式らしさが詰まっていた。今回のプロジェクトリーダーという大役を終えた鈴置結希奈さんも「甲子園大会が今後、準硬式の良さを表現する1つの大きな大会になってくれたらいいと思います」と語り、象徴的な存在になることを期待しているようだった。

是非次回以降も甲子園大会を開く機会をいただき、準硬式を学び、広げ、そして新たな主役を誕生させてほしい。それが甲子園大会の持つ役割であり、新たな象徴としてあるべき形ではないだろうか。そのためにも、今大会に参加した選手たちが先頭に立って、準硬式界を牽引して欲しい。

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