星野監督と野村監督の違い

 星野さんは選手の気持ちを乗せて能力を引き出すのがうまい方です。怖いといわれていますけど、普通、怒られることしていれば、怒られるものですよね。まあその怒り方が異常かもしれませんが(笑)

 一方で野村さんは怒らない。だから逆に自分は怖かったです。何を考えているのかわからないので。二軍に落ちるときも何も言われない。二軍に落ちた選手に「何が課題なの?」と聞くと、「何も言われていないです」というんです。

 星野さんは選手を二軍に落とす時、ちゃんと理由を言います。「こういうところをしっかりとやってこい!」と言うので僕にはすごく良かった。

 また、野村さんは星野さんと違って、選手に直接良いところも悪いところも言いません。新聞記者に言うんですよね。僕らは新聞で監督の評価を知るんです。たとえ良い評価してもらっても、文字だけなので、気持ちまでは伝わってこないんですよね。

ドラフト1位が消える理由

 阪神と近鉄は、同じ関西の球団でもまったく違いました。阪神のファンはとにかく熱い。僕はトレードからきたので、生え抜き選手と比べると、きついヤジも少なかったんですが、ドラフト1位ともなると……。僕は大声援の中で充実した気持ちでプレーができていましたが、ハートが弱い選手には厳しい環境でしょう。阪神のドラフト1位で結果が出ず落ちていく人がいますが、ハートの問題じゃないかと思います。ファンから厳しいこと言われても「あぁまた言っとるわ」くらいの感覚でいいんですよね。

 03年のリーグ優勝に僕はあまり貢献はできていませんが、優勝するチームはどういうチームなのか理解できました。優勝するチームは、レギュラーだけでなく、控え選手もがしっかりと準備できている。

 弱いチームは代打、守備固めの選手たちの心構えができていません。なので結果もついてこず、「なんで準備していないんや!」といわれてしまう。

 でも強いチームはみんな「勝ちたい」という方向にベクトルがに向いているので、試合展開に応じて守備固め、代走要員の選手たちが「そろそろあるんじゃないか」と自然と準備して、すぐにいけるようになっているんですよね。

 今、自分は中学生のチームを持っていますけど、03年の阪神のようなチームにしていきたいなと思っています。

平下晃司(ひらした・こうじ)

 宮﨑・日南学園時代は左の強打者として活躍し、1995年に選抜、夏の甲子園出場を経験。同年、近鉄バファローズから5位指名を受け96年から00年の4年間プレー。トレードで阪神に移籍し(01年から04年途中)、その後ロッテ、オリックスを経て07年に引退。現在は東大阪市にある「ブリスフィールド東大阪 スポーツアカデミー」のベースボールスクールのヘッドコーチを務めながら、東大阪長田ボーイスの監督を務めている。