頑張ろうとしたからこそ、もがき苦しんだ
先輩たちに続け、結果を出したい。そうした選手たちの姿に対して伊藤監督も、「一生懸命頑張っていた」と称賛の声を送るが、それが逆に苦しめてしまったのではないかと考えている。
「わからないですが、『結果を出さないと報われない。こんなところで終われない』といいますか、感覚的なものですが、追い詰められている。結果に対して怖がっているような感覚が、ここ数年の印象でしたね」
そうした姿を普段から見てきたからこそ、指揮官として伊藤監督も「ピリッとした空気を作って少しでもいい練習をやれるように、力になってあげたい」と闘志に火をつけた。
チームの状況も伊藤監督の背中を押した。ベスト8、ベスト16が続いたことで多くの選手たちが日体大柏の門をたたくようになった。日体大柏に期待してチームに来てくれたからこそ、「3年間大事な選手なので、来てくれた選手たちで頑張ろう」と気持ちが入っていた。
だから指揮官・伊藤監督も、この期間はもがき続ける期間になった。
「彼らが入学してから、大会では良い思いが出来なかったことへの悔しさ。そこに対して選手たちは何も恥じることはないんですが、何1つ上手くいかなかったと感じています。
特に前チームは、試合でここぞの場面で固まってしまって、自分たちと戦ってしまっていた。だから練習試合もなかなか勝てなくて、冬場から徐々にきっかけを掴みかけたんですが、掴み切れませんでした。だから自分もこの1年は『もっと頑張ろう、力になろう』と思って、選手との距離をもっと近づけていました」
実際、小野主将に1年生の時の練習を聞くと、「結構、長時間練習をやっていたと思います」と練習量は多かった様子。練習は積んできたが、結果が伴わなかった。だから「素晴らしい相手でしたので、何も恥じることはないのですが、3年生があまりに不憫だった」と選手たちと同じくらい伊藤監督は悔しさをにじませた。
そうして迎えた小野たちの世代、伊藤監督は「ピリッとした厳しい空気のあるチームを作るのをやめよう」と決心した。