第97回選抜高校野球大会(センバツ)は3月18日に開幕(阪神甲子園球場)を迎える。大会開催を前に、出場校の過去のセンバツの戦いぶりを振り返る「出場校あの日・あの時」を紹介していく。今回は2017年、2試合連続の延長戦の激戦を演じた滋賀学園(滋賀)にスポットを当てる。
滋賀学園が2年連続2度目のセンバツ出場を果たした2017年。2回戦敗退に終わったが、ナインは甲子園で「3試合37イニング」を戦った。
初戦は東海大市原望洋(千葉)と対戦。1回に1点を先制したが、3回に追いつかれる。4回に再び1点を勝ち越すも、またも5回に追いつかれ、2対2の同点のまま延長戦へともつれ込んだ。当時はタイブレーク制ではなく、最長15回までの規定となっていたが、14回表に4点を奪った滋賀学園が6対2で初戦突破を果たした。先発した棚原孝太投手(3年)が、実に192球を投げ、11安打されながらも12三振を奪い、自責点はわずか1という快投を見せた。
2回戦はさらに「激闘」となる。福岡大大濠(福岡)相手に先発したのは、宮城 滝太投手(2年)だった。初戦から中3日の試合ということもあり、棚原はベンチスタート。公式戦初先発という宮城だったが、大仕事をやってのける。1回に1点を先制し、8回に追いつかれる展開も、8回途中までわずか1失点。初戦で創志学園(岡山)を下した福岡大大濠の強力打線を抑え込んだ。
試合は初戦に続き、再び延長戦へと突入する。宮城からバトンを渡され、8回途中からマウンドに上がっていた棚原は、相手打線を無失点に抑え、15回引き分け再試合へ。宮城は96球を投げた。棚原は94球を投げて192球を投げた初戦と合わせて2試合286球を投げたことになる。
2日後に行われた再試合では3対5で敗れた。光本将吾投手(2年)が公式戦初登板し、4回まで2対3と試合を作ったが、2番手で登板した宮城が同点とした直後に2ランを浴びての敗戦。投手陣総動員で「3試合」の激戦を演じた滋賀学園ナインには、甲子園の観客からは惜しみない拍手が送られた。
その引き分け再試合を戦った2チームからは、プロ野球選手3人が誕生している。滋賀学園からは、引き分けに終わった試合で先発した宮城が、その後、成長を見せて2018年ドラフト会議でDeNAから育成ドラフト1位指名。22年からは支配下登録を勝ち取っている。初戦が延長戦でなければ、甲子園で先発することもなかったかもしれない宮城にとっては、大きなチャンスをものにして、自分の人生を切り開いたことになる。
福岡大大濠からは、バッテリー2人がプロの道に進んだ。引き分けとなった15回を完投し、再試合でも完投した三浦 銀二投手は、法政大を経て2022年ドラフトでDeNA4位指名。再試合で決勝2ランを放った古賀 悠斗捕手は、中央大を経て22年ドラフトで西武3位で指名された。
ちなみに滋賀学園-福岡大大濠が延長15回引き分け再試合となった直後に行われた第3試合、健大高崎(群馬)-福井工大福井(福井)も、同じく延長15回引き分け再試合(7対7)となった。2試合連続の15回引き分け再試合は、春夏通じて史上初の「珍事」だった。
昨年夏甲子園では8強まで進んだ滋賀学園。昨年秋の近畿大会では8強止まりだったが、大阪桐蔭(大阪)を破ったこともあり「近畿5校目」の評価で夏春連続の聖地切符を手にした。激闘を演じたあの2017年以来となるセンバツの舞台。また観客を熱くする好ゲームに期待したい。