東洋大で苦しみ退部…徳島で再生へ 

  卒業後、東洋大へ進学し、スタメンにも出場しましたが、守備は良いものの、持ち前のフルスイングは影を潜め、やや伸び悩んでいるように感じました。これほどの強打者でも、東都のレベルに苦しむのかと思いました。

 そして23年12月、驚くニュースが飛び込んできました。徳島インディゴソックスの関係者から、「加藤 響が(徳島に)入るかもしれない」という話です。加藤選手はまだ東洋大の3年生。リーグ戦にも出場している現役選手が野球部を退部して、独立リーグ入団は異例でした。

 加藤選手が徳島でプレーして、持ち味の打撃が復活することになれば、ドラフト戦線を賑わせるのではないかとワクワクした気持ちになりました。

 入団から評判がよく、遊撃守備は一級品という評価が入ってきました。そして打撃もすぐに持ち味を発揮しており、最終的に徳島の1年で64試合で、打率.311、6本塁打、41打点の好成績を残しました。環境を変えたのは正解だったのではないでしょうか。安定して実力を発揮できた要因として加藤選手は昨年の取材で心の成長を挙げています。

「ここまで試合数をこなすことはなかったし、リーグ戦前期途中から4番を主に打たせてもらうことになり、チャンスに凡退した時など特に気持ちの部分で大変な点がありました。僕は一打席一打席で一喜一憂するタイプだったので……。それでも橋本(球史)コーチや岡本 (哲司)監督から『打ち取られた時こそ堂々としていないとスケールの大きな選手になれない』というアドバイスを頂いたことで、チームのために全力でプレーする考え方が身に付いたと思います」

 強打の遊撃手として評価を高めた加藤選手はDeNAから3位指名。3位は独立リーグ出身野手として最高順位となりました。

DeNAでもフルスイングを貫くことができるか

 加藤選手はいきなり初の対外試合では3打数3安打の活躍を見せます。加藤選手はドラフト前に、こう語っています。

「(東海大相模時代のチームメイトだった西川 僚祐外野手<ロッテ-ハヤテ>から)『NPBは今まで積み上げてきたものが全て崩れてしまうような厳しい世界』だと聞いています。徳島では主力としてプレーさせて頂きましたが、NPBに入ったら一番下からのスタートになると思っています」

しかし、ここまでの打撃を見ると、加藤選手の技術的な大きな狂いはなく、ベイスターズの首脳陣にしっかりと引き出してもらっている印象がありました。

 ただ、大きく違うのは試合数。徳島では64試合でしたが、NPBは一軍、二軍とも140試合を超える試合数です。タフにプレーできる心身の強さが求められます。加藤選手がフルに才能を発揮できれば、DeNAにとって大きな戦力になると思います。東海大相模で培った高い走塁意識、そして二塁、遊撃、三塁を守れるユーティリティぶり、そして思い切りスイングしながらもしっかりとコンタクトできる高い打撃技術。既存の選手たちを刺激させるものをもっています。

 1年目から成績を残し、高校時代から期待していたファンを喜ばせる活躍を見せてほしいと思います。