今年の高校生を代表する外野手として注目を集めているのが横浜・阿部葉太外野手(2年)だ。愛知豊橋ボーイズ時代から選抜チームに選出されるなど、大きく注目を浴びていた逸材は高校1年夏からスタメンで出場し、着実に実績を重ねてきた。走攻守三拍子が揃い、村田浩明監督からも「最も良い打者を置きたい」という理由から1番で起用されている。そんな阿部のドラフトでの可能性を考えていきたい。
まず打撃を見ると、バットコントロールが長けており、本格派、技巧派関係なく捉えることができる。バットを上段のように立てて構える姿は力みがなく、威圧感がある。投手の足の動きに合わせて始動を仕掛け、すり足気味にタイミングを取って、踏み出す。バックスイングの動きを見ると、捕手方向に真っ直ぐ引くことで、ヘッドの走りもよく、最短距離でインパクトに入ることができる。どの投手に対しても、形を崩さずに打つことができるので、高確率で安打を記録できる。インコースで詰まらされたと思ったら、ショートの頭を超える安打は芸術的だ。
ただ、昨夏の大会では凡打が続いたように、タイミングがなかなか取れずにやや体が突っ込み気味のフォームになっていた。
良い精神状態で試合に臨むことができれば、高打率は期待できる。たとえ凡打になっても鋭いライナーが多く、何より昨秋の公式戦65打席でわずか1三振。練習試合を含めても、129打席でわずかに3つしかない。
高校通算4本塁打で公式戦2本と実戦で強さを発揮しているが、本人も自覚しているように、本塁打を打つ打者ではない。ただプロ、大学、社会人、どのカテゴリーに進んでも打率を残せるタイプであることは間違いない。
次に走塁だが、一塁到達タイムは4秒30で、高校生としては平均タイム。だが、左の俊足打者に見られる走り打ちをしない選手なので、タイムは出ない分、良い打撃フォームで安打を量産できる。阿部の脚力の高さが発揮されるのは、二塁までのベースランニングである。
昨夏の桐光学園戦での二塁打の到達タイムは7秒70で、7秒台後半はプロでも俊足とされる速さだ。
守備は打球への反応の良さだけではなく、球際も非常に強い。前方の打球に対して、果敢に飛び込んでいって、スライディングキャッチを見せる執念強さは非凡なものがある。肩の強さを見ると、本人は強くないと語るが、低いライナー性の送球ができている。
身体能力、視野の広さを含め次のステージでもセンターを担えるものは持っている。
走攻守の総合力の高さを考えれば今年の高校生外野手では1、2を争う選手だ。阿部を超える外野手がなかなか見当たらないぐらい抜けている。
ただドラフト的な観点でみた時、「右投げ左打ち」の外野手は多いタイプで、なかなか評価されにくい。抜群のバットコントロールがあるため、次のステージでも打率を残せる選手となりそうだが、本指名の可能性はあっても、上位指名でいくには、本塁打量産や、5割以上の高打率などよほどのインパクトのある活躍がなければ、その可能性は低い。昨年ヤクルト2位のモイセエフ・ニキータ(豊川)は、高打率を残しながら、センバツで新基準バット1号を記録。本塁打を打てて、確実性も高いスラッガーとしてのインパクトがあった。阿部は打率面や、走塁、守備でインパクトを見せたいところだ。
2年生から名門・横浜の主将を担うキャプテンシーの高さも高く買われるだろう。横浜の右投げ左打ちの外野手で高卒プロ入りした選手は、浅間 大基(日本ハム)が挙がるが、長打力は浅間は上回るが、バットコントロールの良さは阿部が上回っている。
今年のセンバツでのパフォーマンスに注目だ。
<阿部葉太(あべ・ようた)>
右投げ左打ち 179センチ84キロ
田原市立東部町(豊橋ボーイズ)では、中学3年時に夏季全国大会でベスト8、鶴岡一人記念大会で中日本選抜に選出される。
横浜では、1年夏から背番号20でベンチ入りし、5番センターでスタメン出場。1年秋から背番号8で、1番センターが不動のポジションとなった