履正社時代、2019年夏の甲子園優勝を果たし、甲子園通算22勝を挙げた岡田龍生監督。22年4月から母校の東洋大姫路に就任して、3年足らずで昨秋の近畿大会優勝、明治神宮大会ベスト4に導いた。
教え子にはオリックスの岸田護監督、T-岡田(元オリックス)や山田哲人(ヤクルト)などおり、13名のプロ野球選手を輩出している。
技術指導だけでなく、人間的指導にも定評のある岡田監督。その指導論について、様々な角度から話を聞いてみた。
技術指導の前にグラウンド整備、ゴミ拾いのスピードについて指摘
岡田監督は『教えすぎない教え』(竹書房)という著書を19年に出しているように履正社時代から選手の自主性、主体性を力点において指導してきた。
かつては昔ながらのスパルタ指導を行っていたが、2001年に部員への体罰で半年間の謹慎処分を受け、「何かを変えないといけない」と反省。選手や保護者とのコミュニケーションを大切にして、自主性を重んじる指導に方針を転換した。それからは戦績も上向くようになり、卒業後に活躍する選手も増えている。
時代の変化がどんどん加速していく中で、岡田監督は日々アップデートを欠かさず行っているという。
「色々本を読んだり、勉強しています。やっぱり、学校も一つの社会じゃないですか。そこで彼らも生活していくわけです。僕らが高校生で生活していた環境と今の高校は全然違います。それが良い面もあれば、悪い面もあるし、彼らの将来的にプラスになることもあれば、当然マイナスになることもあると思うんですよ。
極端に言えば、礼儀作法を知らないとか、敬語が使えないとか、マナーとかモラルがどんどん低下しているというようなことは目に見えてあります。それをそのままにしていることは、僕は一番ダメかなとは思っているんですよね。昔も今も一番人間性が大事なことだと思っているので、それを今までの伝え方と違って、どう彼らに伝えていく必要性があるかということを伝えることはしていますね」
これまで履正社出身の選手に取材する機会が何度かあったが、「岡田先生には野球以外のことで怒られることが多かったです」と話していたことがあった。取材日も技術面のことよりも練習の準備やボール拾いのスピードについて指摘する場面が目立った。それは東洋大姫路に来てからも変わっていない。
「ミーティングでも野球のこと以外で喋ること多いですね。グラウンドで起こっていることを社会の中での行われていることと重ねて話をすることが多いです。『野球のプレーでこういうことをしていると、社会に出てもこういうので困るよ』とかね。グラウンド整備一つ、ゴミ拾い一つにしてもそうだし、そういうところがなかなかできてない子が多いですからね」
指導法に大きな違いがない中で、履正社と東洋大姫路の大きな違いは寮の有無だ。履正社には寮がなかったが、東洋大姫路では7~8割の選手が寮生活を送っている。基本的に同級生の二人一部屋で生活しているそうだ。
「どこに行ってもそうですけど、身の回りの整理整頓やお互いに思いやりを持って生活しないと、一人住まいしているわけじゃないので、そういうことを寮で勉強したら良いと思います」と寮生活で社会性を身に付けることを岡田監督は求めている。