初めて甲子園で痛感したパワー不足からフィジカル強化とスイングスピードを重要視
続いて、野球の技術面について触れていきたい。岡田監督の野球といえば、強力打線をイメージする人が多いだろうが、1997年夏に甲子園初出場を果たした時は投手を中心とした守りのチーム。攻撃ではバントや走塁を駆使して少ない点数をもぎ取るスタイルだった。
岡田監督の高校時代は守備、走塁、バントを徹底して教えられており、それが指導者になってからのベースとなっている。甲子園で優勝した年も打力が目立ったが、6試合で1失策と堅守だったことも忘れてはならない。
「エラーが多くなって、打てて何とか勝っているという野球はやっぱり好まないですね。どこかで足元を掬われる野球になってしまうので」と守りありきの野球が基本と岡田監督は語っている。
その中で打力強化の必要性を実感したのが、初めて甲子園に出た97年夏。初戦で岩手代表の専大北上に1対2で敗れたことだった。
「僕らの頃とはバットも違う。全国に行って、打たないと勝てないということは一番に感じたんですよ。打つことにももっと力を入れようと、自分の考え方をバージョンアップさせた感じですよね」
それからは体を大きくしてフィジカル強化、スイングスピードの速さを求めるようになった。チームで測定する機械で数字を弾き出しているため、具体的な数字で説明することは難しいそうだが、これだけの数字が出れば、本塁打が打てるという明確な基準が岡田監督の中ではあるという。
現時点の力が数字として出ることで、課題も明確になる。それを基に選手と対話をして改善へと向かわせていくのが岡田監督のやり方だ。その過程をたとえ話を持ち出しながら話してくれた。
「例えば、ラジオが壊れました。音が出ない。どの部品が壊れて、何が原因しているのかを調べないと、1週間経ったからといって、急に音は鳴り出さないですよね。だから、どこかの部品が故障している、だからこれを直せばというような考え方で、『自分がこういう状況になっている。じゃあ。こういうことを改善していけば、バッティングは良くなるんじゃないか』とか、『ウエイトでパワーがついているのにスイングスピードが上がらない。じゃあ技術的な問題、スイング軌道の問題じゃないか」とか、考えさせるという環境を作りたいなとは思っていたんですよ」