近江の多賀章仁監督の勇退会見が10日に同校で行われた。3月31日で監督を勇退して、4月1日からは総監督となる。2001年夏の甲子園準優勝時の主将で、06年からコーチを務める小森博之氏が後任の監督を務める。

 多賀監督は滋賀県彦根市出身。平安(現・龍谷大平安)から龍谷大に進み、1983年に近江のコーチに就任。89年から監督になった。

 監督として甲子園には春7回、夏16回出場。2001年夏と22年春には滋賀県勢の甲子園最高成績となる準優勝を果たしている。

 会見では近江に赴任した背景から、1992年夏に監督として甲子園初出場を果たしたチームのことなど、36年に渡る監督生活の思い出話に花を咲かせた。プロ野球に進んだ教え子にも触れ、林 優樹(楽天)と山田 陽翔(西武)については、「近江高校で日本一になりたいという気持ちを持ってやってくれた選手だと思います。だからこそ甲子園であれだけのことができたんだろうと思います」と語った。

 林に関しては、3年夏の甲子園で敗れた直後、視察に来ていた当時の侍ジャパンU-18代表の永田裕治監督(現日大三島監督)に「僕を入れてほしい」と直訴したというエピソードを披露。気持ちの強い林らしい武勇伝だった。

 甲子園通算成績は28勝23敗。「28勝を挙げたということは、奇跡だと思います。ベンチ前で校歌を歌う時の気持ちを経験したら、ここでそのままあの世に行っても悔いはない。そんな気持ちになる一瞬でした」とこれまでに積み重ねた白星に想いを馳せた。

 指導者生活で貫いてきたことは「主役は高校生」ということ。特に監督生活後半は選手主体のチーム作りを心掛けてきたという。それが2018年以降の躍進に繋がり、高校野球ファンからも愛されるチームになった要因にもなった。


ОBの村西辰彦さん(元日本ハム)、多賀章仁監督、ОBの島脇慎也さん(元オリックス)

 滋賀県勢初の甲子園優勝は後進に託す。「今、滋賀県で準々決勝からの3つを勝ち上がるには相当力がいると思います。甲子園にどのチームが行ってもそこそこいける状況だと思うので、(滋賀県勢の全国制覇は)絶対、そのうちあると思います」と県勢に期待を寄せた。

 会見の最後には同校初のプロ野球選手になった教え子の村西辰彦さん(元日本ハム)と01年甲子園準優勝時の主力左腕だった島脇信也(元オリックス)がサプライズ登場して花束を贈呈。「昔から滋賀県は近畿でも最弱でしたが、それを対等にして下さったのは多賀監督。僕がプロ野球に入団させてもらうのは多賀監督のおかげだと思っていますし、色んなご指導があって成長させてもらいましたので、本当に感謝したい」(村西さん)、「多賀監督と出会い、野球だけじゃなく、生きていく上で人間として大事なことも色々教わりましたし、その中で今日こうして呼ばれたことにすごく感謝しています」(島脇さん)とそれぞれ恩師へ感謝の気持ちを語った。

 今後については、「高校野球に恩返しができるようなことができれば」と語った多賀監督。第一線からは退くが、これからも滋賀の高校野球を支える存在でいてくれるだろう。