パ・リーグ2連覇、そして日本一奪回を目指すソフトバンクの先発ローテーション争いが熾烈を極めている。小久保裕紀監督は昨年の11月下旬に早々と有原 航平(広陵)を開幕投手に指名した。モイネロとスチュワート・ジュニアにも確約を出した。そして春季キャンプ序盤に大関 友久(土浦湖北)、3月に入ってからは新加入の上沢 直之(専大松戸)にも当確を出している。スチュワートは左脇腹を痛めたため現在は離脱しており、決まっているのは4枚だ。
一般的にNPBでは先発ローテーションを6人で回す。小久保監督は先発を7人から8人でゆとりをもって回すことを理想としているが、現時点でローテーションの枠は残り2つ。なおかつ開幕2カード目は2連戦となっており、実際の開幕ローテーションとしてはあと1枠しか空いていない。その少ない枠を勝ち取るべく、ソフトバンクの投手陣はベテランから若手までアピールしている。
昨シーズン支配下登録を勝ち取り、プロ初登板初先発初勝利を飾った左腕の前田 純(中部商)も、その候補の1人だ。オープン戦初登板となった3月4日のヤクルト戦では3回を完全投球。5つの三振を奪う快投だった。11日の巨人戦ではわずか78球で6回無失点と好投しアピールを続けている。
大津 亮介(九産大九州)は3月1日の西武戦(球春みやざきベースボールゲームズ)こそ2回5失点(自責4)と打ち込まれたが、侍ジャパンとして戦った6日のオランダ戦では2回完全投球。昨シーズンは6月末までに6勝を挙げオールスターゲームにも出場した。後半戦に停滞したものの、それでも最終的に119回1/3を投げ防御率2.87と結果を出している。今シーズンは開幕ローテーションから年間を通じて走り抜きたい思いは強いはずだ。
大卒3年目の左腕・松本 晴(樟南)、そしてFA権を行使して巨人に移籍した甲斐 拓也(楊志館)の人的補償として加入した伊藤 優輔(小山台)も争いに残っている。150キロを超えるストレートが武器とする伊藤は、巨人時代に一軍で先発の経験はない。二軍でも2021年に2試合の経験があるのみ。それでも3月2日のロッテ戦(球春みやざきベースボールゲームズ)では、この時期ながら最速149キロを記録し3回無失点。最終候補まで残り続けている。
昨シーズンはわずか3勝に終わったベテランの東浜 巨(沖縄尚学)もオープン戦では2試合で6回を投げ防御率1.50と順調に仕上げてきた。
開幕ローテーション候補からは外れてしまったが、2023年ドラフト1位左腕の前田 悠伍(大阪桐蔭)も3月4日のヤクルト戦で1回を投げわずか8球で無失点投球を披露。開幕投手としての起用が決まっている二軍で結果を残し、再度一軍の舞台を目指すことになった。
開幕ローテーションの残り1枠、そして4カード目で必要となってくる6人目の枠をめぐる競争は最後の最後まで続く。実績のある選手も、新たにチャンスを掴もうとする若手も、結果を出し続けなければその座は確約されない。今後の内容次第では、残りの枠が誰に与えられるか、まだ分からない状況だ。
開幕ローテーション入りを果たした投手たちも、シーズンを通じて安定した結果を残せなければ、途中で入れ替えが発生するのは必至。二軍でチャンスを待つ選手たちも含め、1年間を通じてのローテーション争いはむしろこれからが本番と言える。
パ・リーグ連覇、そして日本一奪回を目指すソフトバンクにとって、盤石のローテーション構築は不可欠だ。その座を巡る競争が、チーム全体の底上げにつながることは間違いない。