今年のドラフトで1位候補に挙がる高校生右腕・石垣 元気投手(健大高崎=3年)。最速154キロの速球、切れのあるスライダーで勝負する剛速球右腕で、昨秋の公式戦では26回を投げ、33奪三振、防御率2.08と結果を残した。2月の取材で見せた投球練習を見ると進化した様子が伺えた。昨秋との違いを分析していきたい。

 石垣は昨秋の投球について満足していないと振り返る。特に秋季関東大会準々決勝の佐野日大戦では2回に満塁のピンチから走者一掃の三塁打を打たれてしまった。全体的にボール球が多く、フォームを崩していた。軸足がすぐに離れてしまい、押し出すようなリリースになることが多かった。そのため四球も多く、ピンチになってから制球が甘くなりがちで、関東大会決勝戦では、球速は出ていたが、振り抜かれる打球も多かった。

 センバツ前の投球練習を見ると、投球フォームの改善が見られた。インタビューでも、「軸足と指先を大事にしています。軸足にしっかりと体重が乗って、指先に力を伝えることができれば、自分の中でしっかりと空振りが取れるストレートを投げられると思っています」と語っているように、かなり慎重にフォームを確認している様子が見られた。

 打者を立たせて、内外角への投げ分け、高低の使い方を意識していた。がむしゃらに速球を投げるというより、打者をどう攻めて打たせて取るのか考えていた。

 そうした中でも投球練習では150キロを計測しており、伸びのあるストレートを投げ込んだ。回転数も2200から2400回転に達し、高校生として上位レベルの数値となった。投球練習を捕手の後ろや、石垣の後ろから見てきて、速球の勢いは20年の高校生NO.1右腕・髙橋 宏斗投手(中京大中京-中日)と遜色ないストレートだった。

 投球練習では再現性の高い内容となっていたので、あとは甲子園で自分のフォームを崩さずに投げることができるか。

 変化球は秋まではスライダー、カットボール系統が中心だったが、この春では、スプリット、カーブも投げていた。本人も130キロ後半を計測するスプリットに手応えを感じており、これまで剛速球、横変化の投球が中心だった。そこに縦変化がマスターできれば、投球の幅は大きく広がるのではないか。

 投球練習だけの判断になるが、秋とは違う投球を見せようと工夫はしていた。ただ初戦の明徳義塾は、石垣のペースで投げられるほど甘い相手ではない。秋のデータ、投球を基に準備するはずなので、石垣は冬の間に磨いていたスプリットなど縦変化を上手く活かせるかに尽きる。

 明徳義塾相手に圧倒した投球を見せることになれば、石垣が目標とするドラフト1位が一歩近づくのではないか。センバツでは世代NO.1右腕に相応しい投球を期待したい。

<石垣元気(いしがきげんき)>

右投げ左打ち 178センチ78キロ

北海道出身。登別市西陵中では洞爺湖シニアでプレー。中学時代、北海道の選抜選手として沖縄遠征を経験。選抜試合での投球が健大高崎の関係者の目に留まり、進学を決断。1年春からベンチ入りし、145キロをマーク。2年春のセンバツでは150キロ、2年夏は153キロ、2年秋は154キロと順調にスピードアップしている。