<第97回選抜高校野球大会:智弁和歌山7-0広島商>◇26日◇準々決勝◇甲子園

 智弁和歌山のエース右腕・渡邉 颯人投手(3年)が8回無失点の力投。ここまで3試合全てに登板し、防御率0.43とベスト4進出に大きく貢献している。

 そんな渡邉にとって忘れられない試合がある。昨夏の甲子園、初戦敗退を喫した霞ケ浦との戦いだ。

 3点をリードされた状況でマウンドを受けると、持ち前の制球力で相手打線を抑え、味方の反撃を待った。すると8回に一挙3得点で同点に追い付き延長タイブレークへ。しかし、延長11回に2点を許すと味方の反撃も及ばず5対4で敗戦。3大会連続での甲子園初戦敗退という屈辱を味わった。

「自分が点を取られて負けてしまった」

 当時下級生だった渡邉には荷が重く、「本当に悔しくて最初の2週間は寝れなかった」という。それでも試合のビデオを見返しながら、悔しい思いを糧に再びマウンドに立ち、秋の公式戦では和歌山2次予選、近畿大会を含めて43イニング防御率ゼロを続けて見せた。夏のリベンジをかけた今大会もここまで圧巻の投球が続いている。指揮を執る中谷 仁監督もエース右腕の成長に目を細める。

「『甲子園で勝たせる思いをするんだ』と、去年の夏の敗戦から一日も切らすことなく過ごしている。どこを切り取っても信頼しかない。『そんな高校生おるんか』と思うくらい気持ちの面が強い。この大会では気持ちの入った投球が出来ている」

 渡邉も「ピンチが来ても動じずに投げられるようになった」と成長を実感。センバツで躍動しているのもあの夏の敗戦があったからだという。

「負けた時は3年生が『お前らは甲子園で勝てよ』と声をかけてくれた。3年生のおかげでここまでこれたと思います」

 同校は準優勝した2018年以来、7年ぶりのベスト4進出。31年ぶりのセンバツ優勝へ、渡邉は先輩の思いを背負って腕を振る覚悟だ。

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