<第97回選抜高校野球大会:智弁和歌山5-0浦和実>◇28日◇準決勝◇甲子園

 智弁和歌山浦和実の勢いを止め7年ぶり決勝進出を果たした。この試合までに18イニング連続無失点を記録していた変則左腕・石戸 颯汰投手(3年)を初回から攻略。打線の中核を担い、3回に二塁打を放った山田 凜虎捕手(2年)は、「低めの見極めをして、ストライクに絞って打つことができた」と話した。

 7年ぶり決勝の相手はここまで公式戦19連勝中の横浜。強豪校同士の一戦となったが、山田には負けられない理由がある。

「中学生の頃一緒にプレーした、小野(舜友)や江坂(佳史)がいる。2人は第1試合にも出ていたし、負けられない」

 山田は小学生の時に中日ドラゴンズジュニアに選出されると、愛知の強豪・東海中央ボーイズで全国制覇を成し遂げた。そのメンバーの中にいたのが決勝で相対する横浜の小野、江坂だ。3人は享栄の坂本 亮太投手(2年)、中京大中京の荻田 翔惺内野手(2年)と並んで「中学BIG5」と称され、中学時代から脚光を浴びていた。名いち早くも存在感を示した3人は、下級生ながら春の頂点をかけて戦うこととなる。

 高校進学時には名門校が争奪戦となっていた5選手。横浜享栄中京大中京と愛知県内外問わず強豪への進学が決まる中、「15年プロでやっていた技術、また同じ捕手として学べることが多い」と指揮を執る中谷 仁監督に強い憧れを抱き、名門・智弁和歌山への進学を決意した。

 プロ3球団を渡り歩き、楽天時代には野村 克也氏の教えも受けた。今では名将として知られる経験と知恵が成長へ導くと信じて門を叩いた。入学後は捕手として重要な配球について多くのことを学び、上級生投手を牽引している。

「投手の得意球をどう活かすのかを考えている。初球から決め球を使うなど、そうした駆け引きをバッター心理に立って考えることを教えてもらっています。バッターの心理に立って配球することで相手打者の嫌な所をつけるようにしています」

 今年の智弁和歌山はエース右腕の渡邉 颯人投手(3年)に宮口 龍斗投手(3年)、田中 息吹投手(3年)と好右腕が揃うが、「野球の面で気を遣っていたらチームに影響する。自分が引っ張っていく気持ちを持ってやっている」と強気な一面も持ち合わせている。

 大会に入ってからも山田は成長を重ねた。2回戦のエナジックスポーツ戦では3投手の継投で快勝したが、「当ててくる打者に対して四球を警戒していた。その中で宮口さんは四球が続いてどういった声かけをしようと思っている中で、試合が過ぎてしまった」と試合後に反省を口にした。

 その後は広島商戦で1回無失点。この日も2番手で4回無失点と宮口の好投を引き出し、「コントロールが定まらないところでもエナジックスポーツの試合よりも良くなっている。次の登板でも力強い真っ直ぐを活かしたい」と収穫を得て決勝に臨む。

 試合前にはかつての旧友と「明日勝って決勝で会おう」と約束を交わしていたという。「横浜は投手力がいいのでチーム全員で勝ちにいきたい」。山田はかつての「中学BIG5」対決に胸を躍らせている。

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